色のない世界【スキル汚部屋編】

三愛紫月

見せる約束

彩りの習得をしなければいけないホウに俺は色を見せる事を約束した。

けれど……。

なかなかうまくいかない。


プー

プー

プー


「あぶねーな!死にたいのか」

「すみません」

「チッ。気をつけろよ」


気をつけろって言ったって、車も白いし、信号機も白い。

現実世界でなら、白銀の世界をさ迷っているようなものだ。

そこに混じる赤は目立つけれど。



見渡す限り真っ白な世界では、生物だけがハッキリ輪郭をしめしている。

こんな世界で、車になんて乗らなければいい。

そもそも、車の時速を10キロまでにすればいい。

いや、モノレールのように車を線路に走らせればいい。


そうすれば、色なんてなくたって事故はしなくなるし……。

歩行者は、安全に暮らせるんだ。


「アーキー、久しぶり」

「パーン、久しぶりだね。どこに行ってたんだ?」

「ちょっとあっちに、用事があってね」


パーンは、黒王国の方を指差している。


「誰かに会いに行ってたの?」

「まあね。昔の知り合いにだよ。結局、会えなかったんだけどね」

「そうなんだね。パーンが心配だったから、会えてよかったよ」

「ありがとう、アーキー」

「じゃあ、帰るよ。頑張って晩御飯のしたくをしなくちゃいけないから」

「ああ。気をつけて」


パーンと別れて家に帰る。

今もまだ、俺は何も出来ない。


「ただいま」

「おかえり」


ホウが疲れているのはわかってる。

仕事をしながら、彩りの習得は大変なのがわかる。

俺みたいに一日中家にいながらスキルの練習しているやつとら違う。


「ホウ、大丈夫?顔色悪いけど」

「多分……大丈夫」

「何かあったのか?」

「やっぱり、働いてる場所は彩りを持ってる方がいいみたいなんだ。だけど、彩りって言ったって……。全部、真っ白だから。どうする事も出来ないよ」

「ホウ……俺の世界ならホウはすぐに彩りのスキルを習得していたよ」

「見てみたいよ。アーキーの住んでいる世界を……」


やっぱり、俺はホウに色がついた世界を見せてやりたい。

その為には、スキルを習得しなくちゃいけない。

スキルを覚えて、ホウに彩りを習得させる。

大丈夫。

俺なら、出来るはずだから……。



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色のない世界【スキル汚部屋編】 三愛紫月 @shizuki-r

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