彼方のキャンパス  出張版

夢水 四季

好きな色

いつも通り、神社でスケッチをしていると、巫女服姿の山城君が横に来て話しかけてくる。

「なあ、お前の好きな色って何?」

「う~ん、好きな色かあ。難しいなあ……」

「俺的にお前のイメージカラーは青なんだけど。心が澄んでるつーかさ」

「うん、ありがとう?」

「素直に褒めたんだぞ。喜べ」

「ありがとう。……青は空や海を描く時に使うかな。爽やかなイメージだよね」

「好きな色って訳ではないのか?」

「好きなんだけど、他の色も良くて……」

「じゃあ赤とかは?」

「赤は夕焼けや、りんごの色だね。あと炎とか。赤には絵を明るくしてもらってるよ」

「緑はどうだ? 木とか」

「そうだね。草とかよくスケッチするよ。あ、あと緑の鳥さんとか」

「メジロか鶯とかか?」

「鳥さんの名前は分からないけど」

「そっか。黄色は?」

「レモンとかバナナの色だね。綺麗な熱帯魚も黄色と黒のシマシマだったなあ。あと、デフォルメする時はキリンやトラも黄色で塗るよ」

「あと兎もピンクにしたりな」

「うん。子ども向けに絵を描く時は、そうするね」

「橙色は?」

「みかんの色だね。明るく温かい雰囲気にする時にも使うよ」

「蠟燭とか暖炉の灯とか?」

「うん」

「他には……、えっと紫は?」

「アヤメとか紫の色の花って意外と多いよね。あとはブドウとか」

「好きな色聞いてる途中になんだけどさ、お前の好きな果物って何?」

「う~ん、バナナかなあ。簡単にむけるし美味しいし」

「良かった。今うちにバナナあるから絵描き終えたら家寄って来いよ」

「ありがとう」

「で、話を戻すんだけど。黒はどうだ?」

「カラスは全身黒だよね。あと夜の闇を表現する時に多く使うね」

「綺麗な黒髪とかな」

「ああ、それもだね。最近、黒猫さんを描いたよ。見る?」

「おっ、見せてくれるのか!」

「はい」

「やっぱり絵上手いなあ。……あとは白とかか」

「白は雲や雪の色だね。あと他の色と混ぜて違う色を作る時にも使うよ。白にはお世話になってるんだ」

「お世話になってるって、ビジネスパートナーみたいだな」

「うん、色は僕にとって仲間みたいなものなんだ。だから、どの色が一番好きとかはなくて、どの色も個性があって良いんだ」

「何かいいな。そういうの」


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彼方のキャンパス  出張版 夢水 四季 @shiki-yumemizu

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