No.04 腐らない食卓

 「腐らない食卓」は沖縄県大城おおぐすく村にある空き家の通称。「M里家」と呼ばれることもある。廃墟愛好家の間で有名であり、奇怪廃墟代表ともいえる物件である。


 廃墟になったのは2000年代だが、経過年数にしてはきれいに保たれている。とはいえ廃墟であることには変わらないので、多くの窓ガラスが割れており、台風のせいか屋根はかなり落ちている。庭にはシーサーが片方落ちていた。


 幹線道路に面する2階建て。

 2階の寝室にはキングサイズのベッドがあり、枕元には夫婦と男の子が3人で写った家族写真が置かれている。その隣には子供部屋が一つ。ランドセルに書いてある名前や性別によると男の子の部屋のようである。

 その部屋の前の廊下には布団が畳んで置かれている。その近くには女児向けのかわいらしいプリントがされた短い箸が転がっていたり、小学校の名札に書いている名前から女の子の布団のようだ。


 そして問題の食卓は1階にある。

 ダイニングテーブルには椅子が4つ。3人分の食事が、手が付いていない状態で放置されている。その食事は鮭、味噌汁、白米、たくあん。朝ごはんだろうか。


 しかし問題は、ただ放置されていることではない。

 腐らないし、虫に食われないのだ。食品サンプル、防腐剤、塩漬けなどの可能性は多くの先駆者により否定されている。

 何の加工もない状態で25年近く放置されているにも関わらず、その間に何も変化していないというのだ。たしかにネットに散らばる写真を見ても、今目の前にある食事と何一つ変わらない。


 なぜか廊下に放置された、女の子の持ち物。それだけでも闇深い廃墟として知られていただろうが、それをも凌駕する謎「腐らない食卓」。

 これは文句なしの奇怪廃墟と言えるだろう。


追記

 どうせならNo.01にすべきだったとは思うのだが、沖縄に行くタイミングがなく、今まで訪れたことがなかったのでこのタイミングになってしまった。

 しかし、奇怪廃墟代表とも言える「腐らない食卓」をやっと訪れることができたので満足している。


奇怪廃墟探索家・でーる

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