奇怪廃墟
No.01 ブナ集落
ブナ集落は、奈良県
家屋跡が10件程度残存。ほとんどは屋根が落ちているが、いまだに建っているものが3件存在する。うち1件は屋根や二階の床が抜けており探索をするには危険な状態であったが、もう2件は探索可能であった。その2件はどちらもコンクリート造の住居で、木造家屋とブナに囲まれ、異様な雰囲気を放っている。
一方の家屋の中は、物の散乱などは見られなかった。名刺、社員証などの残存物から住民は東京都に住む会社員男性であったことが推測される。社員証に記載されている発行日は「2019年4月1日」、苗字は「棚山」となっている(名前は汚れがひどく読み取れなかった)。
もう一方の家屋は、先ほどのものに比べると崩壊が進んでいた。住人が正確にわかるものは残っていなかったが、ワンピースやハイヒール、化粧品が多く残っていたことから、住んでいたのは若い女性であると思われる。
地域の住民によると、このブナ集落には「家屋が増える」という噂があるという。たしかに、家屋の倒壊具合には目に見えて差がある。その上、ブナ集落は1985年頃に最後の居住者が転居し廃集落になったのだが、前述のとおり社員証の発行年は2019年であった。そこで1985年と2019年の空中写真を比較してみると、どうだろう、明らかに建物が3件増えている。やはり家屋は実際に増えているようだ。
では、誰かが建てたのではないか、と言う話になるのだが……このブナ集落は、密集するブナ林の中にぽっかりと穴をあけたがごとく、突然出現する。道の痕跡すら見つからないため、たどり着くには30分ほど迷わぬよう気を付けながら歩き続けなければならない。そんな場所に、コンクリート造の家屋を建てられるだろうか?
このブナ集落の位置するブナ林では2015年5月に女性の首吊り死体が見つかっている。
また、その5年後の2020年にも会社員男性の首吊り死体が発見されている。遺書によると、コロナで将来に不安を抱えた男性は退職。生まれ育った山王市に帰り、ブナ林で自殺したのだという。ちなみにその男性の名前は「棚山」である。
追記
たどり着く前に救急隊のお世話になりそうな立地で、もう行きたいとは思わない。
そして、もしこれが私の考えすぎで実際は奇怪廃墟でなかったとしても、わざわざ廃集落まで赴きコンクリート造の建物を建てるような人と鉢合わせたらどうなるか分かったもんではないので、どちらにせよ行かないほうがいい。
奇怪廃墟探索家・でーる
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