インスタント人間
Grisly
インスタント人間
「さぁ、こちらへおいで下さい。」
R博士は、総統を呼び出した。
ここは某国地下室、研究所。
研究所といえば、目的は一つ。
侵略のための兵器開発である。
「こちらをご覧下さい。」
博士が明かりをつけると、
そこには培養液に漬かった
おびただしい数の赤ん坊。
「これは何だね。」
首を傾げる総統に、R博士は答えた。
「もっとも被害を少なく、
植民地を増やす方法。
それは、結婚です。
次に、情報収集も重要になります。
しかし、これらは非常に難しい。
警戒されるからです。
では、警戒を解くにはどうすれば良いか。
簡単です。
現地民に我らのクローンを、
自らの子として育てさせれば良い。
やがて大きくなれば回収し、
情報を集める。
もっとうまくいけば、
現地民と子どもを作るかもしれない。
そうなれば、
もはや植民地を作ったも同然。」
総統は答えた。
「確かに素晴らしい作戦だが、
1人の人間を育て上げるのには、
かなりの費用と時間を要するぞ。
それを達成できる
物好きな現地民がどれだけいるか…」
博士は返す。
「ええ。
そのために彼等の成長スピードを
早めるよう改造しました。
成人するまで、1ヶ月です。
言わば、
インスタント人間といった所ですね。
これだけの数を送り込めば、
その中の何人かは…」
計画はすぐに実行された。
博士の言う通り、
送られた赤ん坊は、ほとんどが餓死した。
しかし、
その中の数人は、
現地で里子として育てられ、
後の歴史に、
少なからず影響を与えることとなる。
我々もよく知っている。
大昔、月の文明から地球へと送られてきた
その者達。
珍しい見た目。
ともすれば美人と取られたかもしれない。
類稀な力。
そして、彼等に共通しているのは、
ご飯を一杯食べる毎に、
倍になる成長スピード。
もう分かっただろう。
桃太郎、かぐや姫。
そして、特殊な例では、
金太郎、一寸法師…
インスタント人間 Grisly @grisly
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