『は』が好きな女性

村田鉄則

『は』が好きな女性

 ブログタイトル:『は』が好き!

 

 この間、私のママ友がネット上にあげた記事が炎上していました。それは『は』という文字を滅茶苦茶貶す内容でした。私は彼女と友人と言う立場ではありますが、彼女に反論を示したいと思います。反論というのは、論文の世界ではよくありまして、私の大学時代の恩師も自身の論文を他の大学の先生にめちゃくちゃ貶されていました。私が好きな論文とその反論文は、『ホプロクリスマ・スポングス―すなわち武器軟膏を拭い去るためのスポンジ』と『フラッド博士のフォスター師に対する反論、すなわち武器軟膏を拭い去るために用意された礼拝堂付牧師フォスターのスポンジの絞り上げ』です。それはさておき、私の彼女に対する反論を開始したいと思います。『は』は魅力的な文字です。まず、日本語の『は』の子音は、国際音声記号では無声・声門・摩擦音に当たります。日本語で使われる文字の中で声門=声帯を構音点にして音を作り出すのは、『は(ha)』、『へ(he)』、『ほ(ho)』だけと言われています。『は』の対になる文字は日本語にはありません。『ば』があるじゃないか?そう思っている人もいると思いますが、実を言うと『ば』の子音は有声・両唇・破裂音で無声・両唇・破裂音『ぱ』の子音の対になるのです。そう考えると『は』ってかなり特別だと思いませんか?『は』が”それ以外は置いといて”という強調の意味を持つのはこの『は』の特異性から考えると至極当然のことと思います。彼女の発言は正直ナンセンスです。『は』は?を付けるだけで、悪口になると彼女は言ってましたが、『は』が人間が思わず声を出すときによく使われているんですよ、だからそれが偶然、悪口になることもある、ただ、それだけです。溜息をつくときは「はあ…」と言いますし、笑うときは「ハハハ」、驚いたとき・何か了解したときは「はっ」、”はっと気付く”なんてよく使う語ですしね。『は』が世の中に溢れているのも彼女は批判していましたが、そんなことを気にする方がおかしいのです。『は』が主格ではないのは、別にややこしくなんてありません。主語を強調するためには、とても大切な文字なんです。『きみはペット』という漫画がありますが、これを『きみがペット』と変えるとなんだか味気なくなりませんか?なんだか、きみと言う言葉が弱くなっていしまっている。語尾に?が付いているようにさえ感じてしまいます。そう考えると断定の意味でも『は』は重要なんですね。これは、『あいつは君を愛している』と『あいつが君を愛している』を比較しても言えます。やっぱり、物事をはっきりさせるためには『は』は重要な位置に立っているのだと思いますね。そりゃあ、世の中に溢れますよ。『は』は様々な用法があるんですが、私が好きなのは地名を言うときの『は』ですね、『東京は渋谷にある…』とかのあの『は』です。いやガチで良い。『東京の渋谷にある』なんかより、語感が良いし、たった一文字を変えただけで、色んな意味を含んでいて良いですよね。そういや、『こんにちは』とか『こんばんは』に続く語が無いのも彼女は苦言を呈していましたが、それは『は』とは関係ないでしょ。『こんにちは』と『こんばんは』は、その後に続く語があったけど、省略化されただけです。『おはよう』とかもそうですね。パソコンでwaと打つのは、彼女がそこまでパソコンを使うのに慣れていないからじゃないでしょうか。ああ、後、彼女の息子の幼稚園の玄関に『おおきなこえではなさないでね』と言う注意書きがあると書かれていて、いつも見たら、一瞬脳内で『大きな声では(/ɰa/)、成さないでね』と読み取ってしまうって言ってましたが。あれは話を盛り過ぎです。注目度を高めたかったんでしょうね。『おおきなこえではなさないでね』という注意書きの横には、男の子が大きな声で話しているのを注意されている様子のイラストが添えられているのですから。後、誤字か打ち間違いか、わざとか知りませんが、『おおきなこえで、はなさないでね』ときちんと読点も打ってあるんですよ。『は』が嫌いという彼女に反論をぶつけてみました。私は、幼稚園のママ友界のユダになっちゃったわけですが、いやガチであのブログを全文呼んだ後、非常に腹が立ったので、思いの丈をぶつけてしまいましたよ。最後まで読んでくださってありがとうございます。



 ※あくまでフィクションです。

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