第50話 何年経っても何十年経っても、きっと君は奇麗だ【甘々有り】

 ホテルにチェックインするなり、俺達は貪るように欲求不満をぶつけ合った。これ以上ないってくらいに隙間を埋めて、互いの硬くなったモノを擦らせて。


 人間も所詮は獣。本能を解き放って仕舞えば、もう自分の手に負える範疇でなくなってしまうんだ。


「私達、出逢ってもう何年かな? ずっとずっとこの好きは続くのかな?」

「どうだろう。数十年後には俺も腹が出て、髪も薄くなり出して、顔もシワだらけになって、おじいちゃんになるだろうし」


 今ですら自信がないのに、容姿まで劣化してしまえば何も残らない。

 それに対して千華さんは、どんどん女の色気が増しえ美しくなっていっている。


 幼さが残っていた愛らしい笑顔も、男心を擽る魔性の笑みと化した。


「——私は崇さんと同じ世代に生まれることができて幸せだったのかもね。真っ新なあなたに出逢って、カッコよく変わっていく様を隣で見て、一緒に年を取って。私のこの手も、そのうちシワだらけのヨボヨボのおばあちゃんになっていくかもしれないけど、崇さんとなら怖くない。それが家族で、愛なんだろうね」


 お互いの老いも受け入れて、心を許しながら共に歩み続ける。うん、きっと結婚ってそんな感じ。


「ありのままに全部か。でも不思議だよね。千華さんには一番かっこいい自分を見せたいと思っているのに」

「ふふっ、それはお互い様。でもその気持ちに『この人ならどんな自分も受け入れてもらえるだろう』って安心感が付与されるんだよ」


 あぁ、そっか。足されていくのか。


 そう言ってる手前から衣服は脱がし剥がし、俺達は真っ裸のまま全部を曝け出して、時間が許す限り求め合った。


 ——今更だけど、この快感に溺れた表情も仕草も、他の人には見せない特別なものだろう。

 そもそも喘ぐ声って、一体どこから出るんだ?

 千華さんのもだけど自分の声も、恥ずかしくて他の人に聞かせたくない。聞かれたら羞恥心で死ねる。ビルの屋上から躊躇うことなく飛び降りる。


「好きィ……♡ 大好き、好き好き♡」

「俺も好き、世界で一番奇麗だよ」


 君が年を取ってシワだらけのおばあちゃんになっても、こうして抱き合って愛を囁き合いたい。

 こんなふうに激しく求め合うことは叶わなくても、腕を回してギュッと抱擁し合おう。


 体の自由が効かなくなっても、手を取り合って繋ぎ合おう。


 死の間際まであなたの名前を呼んで、世界で一番の幸せ者のまま天国へと召されたい。


「俺は——千華さんと出逢って、関わって恋人同士になれて。家族になって、親になって……啓太を愛して彼の成長を共に見れることが、この上なく幸せなんだ。千華さん、俺という人間と一緒になってくれて本当にありがとう。俺はこの感謝を伝える為に、これから先も君達を守り続けるよ」

「私は器用なことはできないから、これからもずっと『大好き』って抱き締めながらキスをするね」


 明日は……俺達にとって大事な人を呼んで式を行う。大きくもないし派手さも豪勢さもない小規模な式場だが、色々と準備を重ねて作り上げた結婚式だ。


 愛を注げ、永遠を誓い合え。


 明日は、彼女が世界で一番美しくて綺麗なヒロインになる日だ。


 ———……★


「ねぇ、はーたん。パパとママは?」

「うーん、今頃愛を叫びあってるんじゃないかなー?」

「だいしゅき? アイラビュー?」

「そうそう、アイラブユゥー」


 更新が遅くなってすいません💦

 幼稚園へ行く前に一話更新★


 結婚初夜が盛り上がる話はよく聞きますが、前夜に燃えるのも有りだと私は思います(笑)

 独身最後の日にハメを外すよりも、結婚式に向けて意気込む方が愛を感じるよね?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る