無の中で
一の八
無の中で
ブルルルルーっ
「間も無く電車が参ります。危険ですので黄色い線までお下がりください」
場内アナウンスが響いた
「ふぅっ…やっときたか」
静かに呟いた
男は、壁の向こうに中にあるかのように遠くを見ていた
足元に目をやると泥だらけな靴
自分の腕に目をやった
使い慣れたG-SHOCKが
0時近く示そうとしていた
最終の電車だというのにかかわらずさすが都会の街
こんな時間でもホームには人が溢れていた
様々な声が聞こえてくる
バイトで疲れた人、何か大きな楽器を抱えた人、酔っ払いの人…
この街には、人が溢れているな…
ふとそんな事を考えていると、
どんっ!
酔っ払いの知らない男がぶつかってきた。
「あっすみません」
男は、平謝りをし仲間の元へ戻っていった
「おい、大丈夫か?」
「最後の一杯が余分だったな」
「いつもだったらもっと飲んでるだろう」「あっそうだな。はっはっはー」
「自分もあんな風に生きていけたら楽しいのかもな…」
すぅっーと静かに冷たい風が吹きつけた
ガタンゴトンガタンゴトン…
電車が近づく音が聞こえはじめた
少しずつ薄く明るい光が近く
一体、自分が誰なのか分からなくなる時がある。
どうありたいとかどうなりたいとか分からなくて分からなくて、結局何もかもがどうでもよくなることがある。
この中から見える景色は、どんなものなのか想像したが何故かとても虚しく感じてしまったのでやめた
外からみるととても明るく華やで見える景色が
中から見ると全く違った景色を映し出し華やいだ雰囲気が何処かに消えてしまっている事がある
そして静かに電車の中へ乗り込んで行った
ガタンゴトンガタンゴトンと鳴り響く音のまま歩みを進めはじめた
そして、また知らない街へと消えていく
無の中で 一の八 @hanbag
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