僕の右手

一の八

僕の右手




ベンチに座る僕は、目の前の公園で

手を引かれ歩く親子の姿を目にした。




男の子が言った

「なんで、影ってできるのかな?」


母親が答える。

「影はね。太陽があってその光でみんな照らしているからできるだよ。夜でもねお月さんの後ろには太陽さんがいてお月さんを照らしているから夜でも影って出来たりするだよ。」


「そうなんだ!学校の先生みたい!

じゃあさぁ、じゃあさぁ、

太陽が無くなるとどうなちゃうの?」


「そうだね〜太陽さんが無くなっちゃうとお月さんもみんな困っちゃうかな」

「なんで、困っちゃうの?」


「影ばっかりになって真っ暗な所ばっかりなっちゃうからだよ。」

「そっか〜!

みんな真っ暗だったら、みんな一緒だからみんな仲良く出来るじゃない?」


「真っ暗な所ばかりだと道に迷っちゃうから太陽さんがああやってみんなの為に照らしてくれてるだよ」


「じゃあ、僕がその太陽さんになる!

そうしたらみんな迷わなくてすむもんね!

いっ〜ぱい手を伸ばしたら届くかな〜」

「届くかもしれないね」


その母親はおもむろに手を天に向かい手を伸ばした。

遠くを見るような目で、手をかざしていた。



「……そうだね。」




「お母さん何か言った?」



「ううん。何でもないよ。今日の晩ご飯は何がいいー?」


「カレーライス!あと唐揚げにポテトサラダも!」


「そんなに沢山食べれるかなぁ。じゃあ、早く帰なきゃね。」

「うん!」



母親に手を引かれ男の子は、そのまま公園を後にした。




それを見ていてた僕は、親子2人の真似して右手を伸ばしてみた。


「太陽ってけっこう遠いなぁ」


僕は、胸ポケットにある封筒を取り出すと、


ビリビリビリビリ


破り捨てた。



隣りにあるゴミ箱に散り散りになった封筒入れると、


背伸びをして立ち上がった。


「んっぁ〜働きますか!」


スーツの埃を払うと、


公園を後にして歩き出した。

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