第26話 相棒

 バイスの正体を見誤ったカオススライム。

 上半身だけになりながらも飛行して更に接近してくるバイスを脅威と感じた。


 カオススライムが更に攻撃魔術でバイスを狙うが他のダンジョンモンスターやエドリゴがその攻撃魔術を狙って攻撃魔術で破壊しだした。


 カオススライムの攻撃がバイスに集中する事で他のダンジョンモンスターたちが次々と攻撃魔術でカオススライムに攻勢に出る。


 カオススライムが黒い触手で攻撃しようとしてもその黒い触手を魔術で凍らせられたり燃やされたりした。


 カオススライムは数だけはいるダンジョンモンスターをバイスと共に殲滅出来る魔術を発動させた。


 カオススライムを中心にして凄まじい爆発的なの嵐が発生する。

 凄まじい魔術にエドリゴが驚愕する。


「まさかここまでの魔術をここで使うとは…ヤツの魔力は底なしですか!?」


 大嵐が全てを呑み込んだ。

 暴風が止んだ後には無数のダンジョンモンスターが倒れていた、カオススライムはそれらがまた光となって姿を消す前に吸収してしまおうと黒い触手を伸ばす。


「まだ……終わってませんよ」


「ッ!?」


 それはバイスの声だった。

 カオススライムが動きを止める。

 バイスは自身の魔術で上半身だけの身体をカオススライムの近くの地面に固定していた。


 床を砂にして穴を掘り、その砂を固定して暴風から身を守り、そして吹き飛ばされるのを防いだのだ。


「ああ言う力任せの攻撃を待ってたよ、小細工ってさ相手が余裕ない時ほど効くんだ!」


 バイスは自分の頭右手で掴んで引っこ抜く、そしてカオススライムに向けて思いっきりぶん投げた。


 カオススライムにはバイスの頭蓋骨を破壊する攻撃魔術を発動する魔力はなかった。


 バイスはカオススライムの魔力切れを狙っていた訳ではなかったがいずれは限界が来るとは思っていた。


(無限の魔力なんて持ってる生き物はいない、必ずダメージを受け続け、魔力を使い続ければ疲弊するよねやっぱり!)


 本来のカオススライムならこんな状況にはならなかった、不完全な古代魔術で能力の劣るリッチーによって呼び出された事がここに来て顕著に現れた。


 カオススライムは自らの弱体化の理由が分からずに更に混乱する。

 しかし先ずは迫るバイスを倒す事を優先する。

 遂に肉迫したバイスに攻撃を仕掛ける。


 無数の黒い触手の先端を硬化させてバイスを貫こうとした。

 そこでエドリゴが魔術で結界を張る。

 範囲をバイスの頭蓋骨のみに絞った防御魔術は触手攻撃を防ぐ事に成功した。


(けどこれっ持って数秒か……プニいける?)


(当然、プニの出撃だーー!)


 プニはずっとバイスの頭蓋骨の中に潜んでいた。

 バイスの右眼の穴からプルンと出て来てニュッと顔を出す。

 それを見たカオススライムは少し驚いて硬直した。


 動きを止めたカオススライムの漆黒ボディとプニの伸びた青いプルプルボディが触れた。


「必殺……『融合』!」


 プニとカオススライムの身体の触れ合った部分が同化しだした。

 バイスは驚いた声を上げる。


「プップニッ!?」


 事前にバイスはプニにカオススライムを倒せる手段があるとだけ聞かされていた、その内容をプニは必殺技とだけ教えて詳しくははぐらかしていた。


 その理由は…。

 プニが発動した『融合』の能力は同族のスライム同士が一時的に合体し巨大化したりパワーアップする為にあるスライム特有の能力の一つだ。


 本来は同格のスライム同士がお互いの合意の上で発動する能力である。

 遥か格上のカオススライムに無理矢理融合をしようとすれば逆にプニが取り飲まれる可能性が高い。


 しかしそこで予想外の事が起こった。

 バイスの目の前でカオススライムの黒い球体のような身体にヒビが入ったのだ。


「……こっこれは!?」


(コイツはどんなに強くても不完全な存在、それがギリギリのパワーバランスで存在を保てていた、だからそれを少しでも崩せば~~~)


 プニはバイスの予想外に頭が良かった。

 プニと言うちっぽけでも意思ある存在の介入がカオススライムの絶大な力の均衡を崩したのだ。


 自らの力の暴走により体内からズタズタに破壊されるカオススライム。


 せめてバイスたちだけでも道連れにしようと言うのか黒い触手をバイスを守る結界ごと絡め取り逃がさないようにした。


 更にカオススライムと融合してる部分からプニの身体が徐々にガラスのように硬くなっていき、やがてヒビが入る。


(プニ!)


(まだまだーーー!)


 カオススライムこのままバイスたちを結界ごと破壊して握り潰そうとしていた。

 しかしカオススライムと繋がったままのプニが更に輝く。


(バイスは……死なせない……相棒だからーー!)


「プニッ!」


 カオススライムと同化しているプニの先端部分が光り始めた。

 プニが更にカオススライムの体内の力を暴走させているのだ。

 カオススライムの全身のヒビから光が溢れる。


 エドリゴが周りのダンジョンモンスターに避難を指示した。


「プッ………プニ?」


(プニーーーエクスプロージョン!)


 カオススライムが凄まじい大爆発を起こし粉々に砕けちった。

 バイスの視界は真っ白に染まった。

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