第24話 行動開始

 『転移門』を越えた先はまさに激戦地だった。

 戦場の中心にいるカオススライムにダンジョンモンスターたちが様々な魔術を使って攻撃をしていて周囲には爆発音が響く。


 バイスもダンジョンではモンスターと冒険者の戦いは何度も見たことがあるがそれの比ではなかった。


(まさに戦争だね、カオススライム…まさかここまでとんでもなさ存在だったとは…)


 見ると武器を手にしたモンスターがカオススライムに突貫をしていた。

 カオススライムの黒い身体から触手のような物が無数に出て来て接近したモンスターを襲う。


 戦闘慣れしたモンスターたちは手にした剣や槍で触手を切り裂き、盾で防ぐが直ぐに新らたな触手の攻撃を受けて物量で押し返されてしまっていた。


(アレじゃあ近づく事もままならないね)


(確かに…けど近付ければプニの切り札で倒せるのに!)


(……プニ)


 バイスがプニとテレパシーを交わしていると獅子頭のモンスターがバイスに話し掛けようとする。


「おいっスケルトン、先ずはお前があの怪物の気を……」


 「逸らせ」とバイスに無理難題を命じようとした時、エドリゴが姿を見せた。


「待てっそのスケルトンは雇われたモンスターじゃない、僕のお客様だ。変な指示をするな」


「エドリゴ様!?」


「持ち場にはお前たちだけでいけっそのスケルトンには話がある」


 エドリゴが命じると獅子頭は丁寧に頭を下げてさっさと姿を消した。


「エドリゴさんありがとうございます、おかげで出来ない仕事を言われなくて助かりました」


「いえっアレはそう言う事をこの土壇場でも言ってくるタイプのヤツですから、本来そんな指揮権は与えていないんですが…」


 エドリゴは一度に溜め息をついてからバイスに向き直る。


「所でバイスさん、現状は抑えてますがほぼ勝ち目はありません。先程は後詰めと言いましたが死ぬだけの戦いを僕は貴方に強いたくない、ここは僕の『転移門』で…」


「いえっそれが…」


 バイスは少し迷ったが、素直にやたらと自身たっぷりなプニの事を話した。


 エドリゴも最初は戸惑う、しかしバイスの頭の上で執拗にジャンプして主張をしてるっぽいプニを見ていてエドリゴの気が変わった。


「……取り敢えず僕の魔術でプニと話をしてしますね」


 エドリゴが魔術を詠唱しだす、それは『通訳会話』の魔術だった。

 本来なら言葉が通じない相手とも一定時間の間普通に話が出来る魔術だ。

 魔術を発動するとエドリゴはプニに話し掛けてきた。


 「さてっ術は成功したかな? プニちゃん聞こえる?」


(聞こえる、それは前から聞こえていた)


「そうか、そうだったんだね。今は僕にも君のテレパシーが聞こえるよ」


 エドリゴの『通訳会話』の魔術は成功した。

 流石の魔術の腕にバイスは感心する。


「それでプニちゃんはどうやってあのカオススライムを倒せると?」


(フフフフそれは…)


 プニはバイスにした説明をエドリゴにもする、話を聞いたエドリゴはそんな事が本当に可能なのかとしばし自問自答していた。

 しばらく迷っているとバイスも口を出す。


「エドリゴさん、ウチのプニは嘘や出来ない事をやれるとは言いません」


「バイスさん…」


「どうかプニを…僕の相棒を信じてくれませんか?」


(バイス~~~!)


 プニは喜び、バイスの頭の上でプルプル震える。

 それを見たエドリゴは笑みを浮かべた。


「……分かりました、しかしその作戦にはあのカオススライム相手にヤツの元に二人を連れて行く存在が必要ですね」


「ええっ戦場のどさくさに紛れてと思っていたんですが、それも中々に難しそうで」


「それはそうでしょう、戦場は甘いところではありませんからね…ならばその役目この僕が引き受けましょう」


「エドリゴさん、本気ですか?」


 エドリゴの申し出にバイスも目を丸くする、スケルトンなので目はないが。


「僕もこのダンジョンの幹部だ、出来るならダンジョンモンスターたちを無駄死にさせるなんて御免です。戦うからには勝利をもたらしたい」


(勝利をこそ正義!)

(プニ…少し静かにね?)


「そしてプニちゃんの作戦ならその可能性は低くないと僕も感じました。少なくともこのまま何も手を打たなければ全滅ですしね、ならばその賭けに乗るのも悪くないでしょう」


「エドリゴさん……ありがとうございます!」


 バイスはエドリゴに頭を下げて礼を言った。

 エドリゴは笑顔で頷き、三人はカオススライムに一矢報いるべく行動を開始する。

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