第22話 史上最強のスライム

「……そうですか」


 バイスは情報を整理する。

 カオススライムは強い、しかしそれでも現状が一番弱いのだ。


 更に『吸収』の能力を持つと言うことはほっておけば更に手のつけられない存在になる可能性が高い。


 実際に過去には『吸収』で際限なく力を付けた上位スライムが力のままに暴れ回り大陸の生物を手当たり次第に喰らったという逸話はあった。


 今は存在自体が不安定なカオススライムだがそれ以上の強大な存在になる可能性は大いにあるとバイスにも分かった。


 ならば『白砂の大寺院』のダンジョンマスターが言うように今すぐに倒してしまった方が良い、地上に出れば確かにとんでもない被害が予想される。


 しかしそもそも現時点でも勝算がなさ過ぎる、バイスは元より争い事には向かない性格をしていて戦力にもならないと思っていた。


「……自分に言える事は、事がここまで来るともう逃げる事しか」


 バイスが逃げますと言う前にプニがバイスにテレパシーを送って来た。


(プニなら勝てる!)


「えっプニ……?」


(プニは史上最強のスライム、あんな形だけのスライムに負ける訳がない)


 いつの間にかプニが史上最強を名乗りだしている、その事に若干戸惑うバイスだった。


 しかしテレパシーはその意志の強さも伝わる、本気でプニはあのカオススライムを倒せると考えている事がバイスには分かった。


(プニとバイスがいれば誰にも負けない、最強のコンビだから!)


「…………プニ」


 エドリゴはバイスに今後の事を話し出した。


「バイスさん、我々は総力を上げてあのカオススライムの討伐に乗り出します。人間たちが自分たちの街の事で手が空いていない今しか出来ませんからね」


「……それなら自分たちも協力します」


「本気ですか? バイスさんは確か商人だと…」


「商人でもです…ここで知らない振りをすれば、何とか出来る最後のチャンスをふいにするかも知れませんから」


「……分かりました」


 エドリゴが手にした杖を軽く振るうと二枚の紙が現れた。

 バイスはそれに見覚えがあった。


「これは…ダンジョンとの契約書ですね?」


 ダンジョンの契約書とはダンジョンの中で活動するモンスターが交わす物で契約する事でダンジョンの中限定で様々な恩恵が与えられる。

 身体能力や魔力の強化だったり中には特殊能力も強化される事もあった。


「ええっ念には念を入れておきましょう、もちろん変な契約はするつもりはありませんけどね。確認をお願いします」


「……分かりました、プニ」


(確認確認!)


 契約書を受け取るとバイスとプニはその内容を確認する、そして確認を終えるとお互いの契約書を交換してダブルチェックをした。


 契約内容の確認はしっかりしておくのは社会で働く者の基本だ。

 契約内容を確認するとダンジョン内での再生も可能とあった。


 それらを確認したバイスは一度頷いて契約書にサインをする、プニのサインは自身がペタンと契約書に乗るとシミが出来た、それがプニのサインだ。


 サインをした契約書はバイスたちの目の前で光となって消えた、これで契約書の効果が現れるようになる。


「これで契約は完了ですね、エドリゴさん、何か他にも準備が必要な事はありますか?」


「ありません、まずは僕たちこのダンジョンのモンスターが事に当たりますのでバイスさんたちは後詰めとして他のダンジョンモンスターと共に待機してもらう事になると思います」


「分かりました、ならその待機場所がどこなのか教えて下さい」


「はいっ後詰めとなる戦力は階層を越える為の『転移門』が設置された魔道具がある場所で…」


 バイスはプニと共にエドリゴに教えられた後詰めの待機場所を向かった。



 

 

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