第13話 商人でも…
その後はバイスの予想通りお腹を満たした後には散歩の流れになった、しかしプニは頭の上から動く気配はない。
まあいいかとバイスは散歩をすることにした。
見慣れた街並みと行き交う人々を見ながらの散歩も悪くなかった。
するとバイスに声をかけてくる人がいた、駆け出し冒険者のエリーだ。
「バイスさんこんにちは」
「こんにちはエリーさん」
「今日はバザー市場にいなかったからどうしたんだろうって思ってたんですよ」
「ええっここの所色々あったので休んでいたんです、エリーさんの方はこの頃はどんな感じですか?」
「私は冒険者としてダンジョンに挑む日々ですよ……もっともまだ第一階層をうろうろしてるだけですけどね」
「ダンジョンで急ぐのは禁物です、自分のペースを見失わないようにです」
バイスの言葉に「はい」と素直にエリーは返事を返す、エリーの中ではダンジョンの出土品にやたらと詳しいバイスは若い頃は冒険者としてダンジョンに挑んでいたのかもと思われていたりする。
お互いに駆け出し商人と駆け出し冒険者として日々のすくすくとした成長を感じる日々の中、似たような立場にいる事も手伝い妙な親近感があった。
その後もバイスとエリーはお互いに成功した事や失敗した事などを語る。
「この前は宝箱がミミックだったから死ぬかと思いました…」
「自分は変な出土品を無理矢理冒険者から売りつけられそうになったんだ」
「ダンジョンで隠し部屋を見つけてお宝とかあったらラッキーって中を覗いたら仲間にこの部屋には入ると死ぬトラップがしかけられてるって…教えられなかったら危なかったです」
「出土品の中から掘り出し物を見つけるのも大変なんだよね…そろそろ値上げを考えるべきかな?」
どうやら失敗やら愚痴の類の方が多いみたいである。
そんな話をしながらいつの間にか二人は一緒に散歩をしていた。
その時、街の人々がにわかに静まり返る。
妙な空気と気配をバイスとエリーは直ぐに察した、二人はお互いに頷き合うと共に移動を開始する。
街のどこかからか逃げてきたらしき人間を捕まえて何かあったのか尋ねた。
すると街の中に再び武器を手にして意味もなく暴れている暴徒が現れたそうだ。
しかも今度は数が多く十数人以上、それも以前よりもかなり実力のある冒険者たちらしい。
実力のある冒険者が呪われて、理性を失い暴れているとなるとバッカニアの街の人間にも被害が出るかも知れない。
「……エリーさん」
「バイスさん、私はその現場に行きます。貴方は冒険者ギルドに言ってこの事を知らせて下さい」
「本気ですか?」
エリーは駆け出し冒険者だ、下手に戦えば命の危険があるとバイスは考えた。
しかしエリーは譲らない。
「バイスさんは商人です、むしろ暴徒に近づくのが危険なのはバイスさんですよ? 冒険者ギルドから人間が派遣されたら無理はせずに退避して下さいね」
「……分かりました」
エリーの言葉は正しかった、冒険者は荒くれ者も多いが街に危機が迫ればいの一番に事に当たる人間が多い。
駆け出しでもエリーにはその気概が窺えた、バイスはそれ以上は何も言うまいと決めてエリーの言葉通り二人は分かれてバイスは冒険者ギルドに向かった。
冒険者ギルドの受付嬢に話をして状況を整理する、やがて話を聞いた冒険者たちが武器を手にギルドを後にした。
役目を終えたバイスはやはり避難をするようにと言われたが胸騒ぎがしていた。
また現れた呪われた冒険者…しかも今度はその規模が更に大きいとなると、どうやら本当に裏で糸を引いてるヤツがいるかも知れないんだよね。
バイスは現場に行きその裏から事件を引き起こしてる存在を見つけてやりたいと考えた。
平和な街の空気を台無しにされた事で静にバイス、そしてプニも怒っていた。
(プニ、ちょっと危険かも知れないけど良いかな? 少しは商人でも…ね)
(いいよ、プニもきっと悪いヤツがいるって感じがする…)
(確かにね、それじゃあ今回は…杖で頼むね)
(分かった!)
人気のない場所に移動する、そしてプニがバイスの手の平の上に移動するとその姿を金属製の杖に変えた。
先端に青いドロップ状の宝石が付いている立派な杖だ。
「それじゃあ行こうか……プニ」
(うん!)
バイスは現場へと走り出した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます