第28話 

 俺の名前は小金井徹コガネイトオルだった。


 だけど、今ではただのトオルとして、異世界で生活をしている。


 そして、俺の横にはキラキラとした見た目に王子様であるブラフが横にいる。


「ねぇ、トオル。最近は人も増えてきたから、領地としても形ができてきたと思うんだ」

「ああ、そうだな」


 最近の領地は、今後の発展を左右する重要な局面に差し掛かっていた。


 新たに増えた領民たちが日常生活に慣れつつあり、領地全体をより効率的に管理するために、役職の割り当てを決めることにした。


 まずは領民を三つの部門に分け、各部門のリーダーを選ぶことに決めた。


 ・農業部門


 これは俺としては専門外になるので、元々グシャで村を管理してくれていた村長に頼むことにした。森の開拓を行なって領地が増えているので、農業による食料自給は増やしていきたい。


 領地の広大な荒れ果てた土地を復興させる計画は続けていく。


 カタログギフトによって、ダンプやユウボを具現化できれば、豊かな作物を育てる大地を作成することもできるだろう。


「この土地も、ずいぶん見違えたな」

「みんなが頑張ってくれているからね」


 当初よりも村らしい形ができて、感慨深い。


 ・ものつくり部門


 ものつくり部門は俺が監督することになった。


 鍛治の神様からもらったスキルのおかげで、俺は優れた技術を持つ職人としても活躍できるようになっている。森から取れる木材を使った家作りや、道具の開発はかなり順調に進んでいる。何よりも、スキルのおかげで物作るをする時短になってくれているのがありたがい。


 この辺りは異世界だな。住民たちも俺の技術を見て次々と武器や生活用品を作り出してくれている。


 俺は大工としての能力も発揮できているので、かなり楽しい。


 兵士たちのために住居を増築したり、作業場を整備したりと領地の基盤を固めていった。


 領民たちは「トオル様のおかげで、我々も安心して働けます」と感謝を伝えくれて、自分の存在価値が上がったように感じられる。



 ・警備部門


 最近はレベルを上げるため以外では、戦闘を行わなくても良くなっていた。


 フルフルがスナイパーライフルを渡すと魔物を狩ってくれる。


 その成果はかなりのもので、領民の肉保有率がかなり高くなった。


 そして、戦闘後から領民になった300人を警備部門に割り振れたので、フルフルの倒した肉を運んでもらうことができるので、フルフルを統括に据えて上手く行っている。


 彼女は成長してからは領民たちに恐れられる存在ではなく、むしろ頼もしいリーダーとして信頼を得るようになった。


 兵士たちのアイドル的な扱いで、「お嬢!」と呼ばれて、魔物の脅威に備える力をつけていた。


「フルフル様がいるなら、領地は安全です!」


 兵士たちからかなりの信頼を得ている。


「お父さん、警備は私に任せて!」


 フルフルが楽しそうにしているので良かった。



 ・ブラフの領地経営



 ブラフは領地全体の管理を行い、財政や外交にも力を入れていた。ここに来た頃は不安そうにしていたのが嘘のように最近は冷静で緻密な計画を練っている。


 隣国との関係も今は穏やかになっていて、領地は安定している。


「これからも、俺たち二人でこの領地を発展させていこうな、ブラフ」


 俺が声をかけると、ブラフは優しい笑みを浮かべて頷いた。


「もちろんだよ、トオル。お前がいれば、どんな困難も乗り越えられる」


 そんなある日、女神様が舞い降りた。美と愛の女神フレイヤ様。


「フレイヤ様!」


 俺が急いで頭を下げると、フレイヤ様は満足げに微笑んだ。


「うむ。教会ではないので、電波が悪いかもしれんが、急いで知らせねばならぬことができたので、無理やり来たのじゃ」

「大丈夫なんですか?」

「うむ。お前たちの絆はますます強くなっておる。我々、女神の間で楽しみで楽しみで仕方ないのじゃ。そこで、お前たち二人の愛と絆をさらに深めるために、妾が特別な加護を授ける。次の子供は卵ではなく、真にお前たちが望む形で産み落とされるだろう」


 その言葉に、俺は何を言われているのかわからなかった。


「うん? 意味がわからないのですが」

「くくく、お前たちの物語は続く。今後も二人仲良く過ごすのじゃぞ」


 女神様の言葉に、俺は首を傾げるばかりだ。


「よう、ブラフを抱けば。子供ができると言うておるのじゃ」

「はっ!?」

「くくく、楽しみにしておるぞ。妾は面白いところを見たいのじゃ!」


 いや、何言ってんだこの女神様。


「お前たち二人の絆がさらに深まるように、妾が特別な加護を授けてやったのじゃ」


 フレイヤ様は指を軽く動かした。


 ブラフの体が淡い光に包まれた。驚いた俺はすぐにブラフの方を見たが、ブラフ自身は時が止まっているので変化に気づいていない。


「な、何をしたんですか?」


 俺が少し警戒しながら尋ねると、フレイヤ様は愉快そうに笑った。


「心配するでない。ただ、ブラフに子供ができる体を与えたのじゃ。もちろん、体は男のままじゃから、交わらなければ子供はできんがのう」

「えっ!?」


 俺は驚いてブラフを見つめた。ブラフに子供ができる?


「そ、そんなことが……本当に?」


 フレイヤ様は得意げに頷いた。


「そうじゃ、これは特別な加護じゃぞ。お前たちが交われば、次の子供はお前たち二人の間に自然に生まれるのじゃ。ただし、時が来るまで男の体であり続ける。どうじゃ、楽しそうではないか?」


 俺は言葉を失い、状況があまりにも突拍子もなく、どう反応すればいいのか戸惑っていた。


「……そんなことが可能なのか……?」


 俺はブラフの体を確かめるように呟いてしまう。


 フレイヤ様は笑い声をあげた。


「妾の力を侮るでないぞ。お前たちが真に愛し合い、絆を深めれば、次の子は卵ではなく、真の形で生まれるじゃろう」


 俺はしばらく黙ってしまう。


 フレイヤ様は満足げに俺たちを見つめている。


「妾が与えたこの加護、存分に楽しむがよいぞ。お前たち二人なら、素晴らしい家族を作れるじゃろう」


 女神が再び消え去ったあと、時が動き出して、俺は複雑な感情を抱えることになった。

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