第15話 大賢者は生き続ける。

 戦争は一年で集結した。

 一人の大賢者の手によって。彼は暴徒たちを大魔法にて殲滅したのである。

 こうしてこれらの宗教はこの世界から消えることになる。

 その大賢者の名はアルムス・クロム。かつて魔王討伐に唯一関わらなかった

 ※称号スキル持ちであり、宗教戦争まで一切名を轟かせることはなかった。

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 ※称号スキルとは…【勇者】【大賢者】【剣聖】など、

         女神より恩恵を受けた最強クラスの

         スキルである。

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 宗教戦争にて名を挙げた大賢者クロムは有名になり、三代目国王リグルス陛下がその力を国防戦力として欲し、王国の宮廷魔術師になることを提案されるがクロムはそれらをすべて断った。

 が、王国からの呼びかけは一切止まらず、ついにはい縁者が押しかけてくるまでになった。何度も家に来る王国の使者が面倒くさくなったのか彼は魔物狩りをするためと言い、この国を出て終焉の森へと旅立った。


(これでおしまいか。...王国バカだな。自分の孫がやらかしたのか、彼を国の戦力にしたいとしつこく勧誘した結果、彼はこの国から出ていった。これじゃあ意味がない。それより大賢者クロムか...僕も一度だけ話したことがある。勇者の時の話だ。元々彼は王都には住んでおらず、終焉の森に住んでいたのだ。魔王討伐を志す僕達一向に大魔法を指導してくださった方、僕から見れば師匠なのだ。スパルタ過ぎて死ぬかと思ったけれど、師匠から大魔法を習っていなかったら僕達は魔王に勝つことなんぞできなかっただろう。だからこそお礼として国を作ったときに王都のお屋敷を一つ彼にあげたのだが、孫が失礼してしまったから彼は帰ってしまったのか...。なんだか申し訳ないな。ならば...)


「――師匠を探しに終焉の森に行ってみよう!!」


 というわけで僕は図書館を出て終焉の森に徒歩で行くことにした。え?飛んでいけって?だめだよ。飛んでいった結果妹に見つかって変に勘ぐられても面倒だろう?


 こうして徒歩で歩くこと1時間ほど。ようやく終焉の森が見えてきた。とはいっても王都が魔物だらけの森から約1時間でたどり着ける位置にあるってどうなのよ。誰だよここに王都作ったやつ。

 ...僕だった。


 と、くだらない茶番はおいておいて僕は入口に向けて呪文を唱える。

「我らが勇者の師よ。我こそは勇者ソルド・アルトスティナである。森の秘門よ開け。」


この呪文は自分の魂と名前があっていることを証明し、その上で大賢者の善友であるかということを検査するための魔法を起動させる呪文で、この魔法は師匠が独自に開発したセキュリティシステムなのだ。

 僕がそう唱えると眼の前に大きな扉が現れる。


「相変わらず師匠の魔法は規格外だなあ」


 と僕はつぶやきながら扉を開ける。すると扉の向こうには西洋風の大庭園が広がっている。


「やあ。誰かと思ったら魂がソルトじゃないか。」


「...師匠、魂を見ただけで僕だとわかるとは、やはり規格外ですね。」


「君にも言われたくないけどね?」


「...ブーメランです。」


ーーーーーーーーーーーーーーー

おわかりいただけただろうか。彼らの会話の恐ろしさを。

つかさは、に驚いているんです。

そう、魂が見えるということは彼らにとって常識なのである。

ーーーーーーーーーーーーーーー


 聞いてくれよみんな。僕でさえ魂を見るだけで誰かなんてわからないんだよ。見た目は転生で98回変わっているわけだから魂を見るだけで僕をソルド・アルトスティナと判断できる人間なのだ。

 もはや人間かどうかもあやしい。

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

女神が何も言わないので私がかわりにツッコもう。

ブーーーーーメランッ!!

ーーーーーーーーーーーーーーーーー


「さて、ここに来たということはなにか僕に用事があるのかな?」


「あ、そうだった。あの、孫が大変失礼をいたしました。孫がやったとはいえしつこく使者を送って恩師に迷惑をかけるなど...。本当にすみませんでした。」


「あ〜なつかしいね。80年前のことだね。気にしないでくれ。10000年以上も生きているからね。そのくらいでは怒らないよ。」


「そう言ってもらえるとありがたいです。」

 ...そうだったこの人年齢8000年以上前から生きてるんだった。なんで8000年以上前っていう表現をしているかというと彼曰く、記憶があるのが8000年前だかららしい。末恐ろしいよね。やっぱりこの人人間じゃないなくない?


「そういえばここ僕のつくった空間だから君の考えてることすべて筒抜けだからね?」


「あっ...。」


 やめて?師匠が笑顔でこちらに迫ってくる。笑顔だが、顔が一切笑っていない。

 やばいかもしれない。


「君、もう一度訓練してあげようかい?」


 その瞬間僕にスパルタ訓練の記憶が蘇り、体が恐怖を感じたのか勝手に出口へ向かって全力で走った。が、あと一歩で出口というところで先生が【テレ―ポート】をつかい、眼の前に現れた。その後僕がどんな訓練を受けたかはご想像にお任せしよう。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る