三次真美

「真美ちゃん、俺の靴下だしといて。」

「そこに出しといたよ。」

「お母さん、今日あみとご飯食べてくるから。」

「了解。」

「お母さん、コンタクトなくなっちゃうから新しいの買って〜。」

「う〜ん。わかった。」


三次家の朝は賑やかい。

夫、和博53歳、会社員。

双子の娘、奈那と理那、高2。


「行ってきま〜す。」


はあ〜。

疲れた〜。

毎朝、娘のお弁当作り、夫の仕事の準備、洗濯、片付け、それから自分の仕事の準備。

朝だけで、もうクタクタ〜。


時計は午前8時。


やばい、あたしも急いで準備しなくちゃ。

洗面所で顔を洗い、メイクをする。

面倒くさい。

ほんとは、スッピンで行きたいと思うが、50前のオバサンがスッピンでいたら、お客さんから苦情がきそうだ。

ササっとメイクをし、ヘアアイロンで髪をセットして、制服に着替える。


玄関の姿見で全身をチェック。

よし、完璧。


「おはようございます。」


車で15分程のところにあるお弁当屋さんで、週5、9時から5時まで働いてる。

個人でやってる小さなお店だけど、ここのオーナー夫婦(70歳代)がほんとに良い人で、毎日楽しいんだよね。


「真美ちゃんとこの、奈那ちゃん、理那ちゃん、もうすぐ3年生だよね。進学するの?」

「そうですね。2人とも大学に行くから、ほんとに大変です。頑張って働かないと。」


お弁当のコロッケをあげながら、あたしは答えた。

そうなんだよね、うちは双子だから同時に出費があるから、結構キツイ。

はあ。

大学に、自動車学校に、成人式に・・・

考えると頭が痛くなってきちゃう。

パートもう1つ掛け持ちで増やそうかなぁ・・・。


「すいません。」

「はーい。いらっしゃいませ。」


常連さんの橋本さんだ。


「いつものですね。」

「うん。いつものね。今日は天気がいいね。」


常連さんとの何気ない話をしながらの仕事は楽しい。

橋本さんは50歳くらい?のバツイチで、会社を経営している。


「今さ、俺ダイエットしてるんだよね。」

「え〜?どうして?」


橋本さんは、顔を寄せて小声で言った。


「真美ちゃんとベットを供にする為に。」

「あはは。やだぁ。もう!」


勘弁してくれよ。


「本気だよ。旦那さんが羨ましいな。こんなカワイイ奥さんがいて。」


あたしは、またね~。と愛想笑いでごまかした。

はあ。このてのお客さんは、まあまあいる。

自分で言うのは、なんだけど・・・

あたしは世の中的には、まあまあカワイイ方だと思う。

身長は153センチ。

色白で、パッチリ二重の丸い目で、若い時から、それなりにモテた。

でも、雅ちゃんと違って、あたしには浮気願望は全くない。

平凡だけど、愛する夫と、カワイイ2人の娘との幸せな家庭で、あたしは大満足なのだ。

 

時計は5時をまわった。

今日も終わった終わった。


「お疲れ様でした」

「お疲れ様。また明日ね。」

さ、買い物して帰るか。

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