天才小学生が“好きな色”に挑む

薄味メロン@実力主義に~3巻発売中

どんな色が好き?

「今日の宿題について、議論をはじめます」


 クラスメイトと机を並べて、ボイスレコーダーを起動させる。


 ちょっとだけ面倒だけど、今日は重要な会議。


 ネットにつながらない物をお父さんに借りてきた。


「発言はこの場限り。SNSなどには、アップしないようにお願いします」


 みんなの顔を見て、お互いに頷く。


 黒板に向かい、僕はチョークを握った。


『好きな色は?』


 僕たちを悩ませる難問を書き込む。


 背後からは、頭をかかるような、クラスメイトの溜め息が聞こえた。


「静粛にお願いします」


 僕も同じ気持ちだけど、歩みを止めるのはダメだ。


 嫌な空気を断ち切るために、口火を切る。


「僕は手始めに妹に聞き、彼女なりの答えを得ました」


 一瞬の間があって、教室がわく。


「すげぇ!」

「妹さん、天才かよ!」


 そんな声が聞こえる中で、僕は首を横に振った。


「赤色が好き。そう端的に返されました」


 みんなの期待が高まる。


 けど僕は、みんなが求める答えを持ち合わせていない。


「理由は、イチゴが好きで、イチゴは赤いから」


「……印象操作か?」


「ええ。僕もそう思いました」


 味と色。


 この二つに、因果関係はないはずだ。


「なにより、妹は赤いトマトが嫌いです」


 一瞬で矛盾が生まれ、クラスメイトが頭を抱える。


 そんな中で、最前列に座る真子ちゃんが手を挙げた。


「みんなは、好きな色の歌を知ってるよね?」


 どんな色がすき?


 そう聞かれ、様々な色を答える子供向けの歌だ。


 僕も含めて、みんなが頷いている。


「問題です。黄色って答えたら、黄色のクレヨンは?」


「一番先になくなる」


「うん! 私はこれを逆にして、仮説を立ててみました」


 好きな色だと、クレヨンがなくなる。


 クレヨンがなくなると、好きな色。


 それは、つまり、


「塗った色の面積」


「正解! いっぱい塗るってことは、いっぱい見るってこと」


「一番見た色が、自分の好きな色……」


 妹も、イチゴをじーっと眺めてた。


 なにも矛盾しない!!


『もんだい すきないろは?

 こたえ いっぱいみたいろ 』


 先生に見せた。


 困った顔をされた。


『もうちょっと

 頑張りましょう』


 花丸ハンコは、もらえなかった。

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