あたしが勝ったらえっ〇しよう

kao

第1話

「あたしが勝ったらえっ〇しよう」

「は?」

 唐突に友人から発せられた言葉。私にはその言葉の意味を理解することが出来なかった。

「……今なんと?」

「〇ックスしよ?」

「警察よびますね?」

 携帯を取り出し『110』と打ち込むもうとした……が、その前に土下座され、私は打ち込む手を止めた。

「ちょぉぉぉ!? ごめんなさい違うんです。聞いてください」

 彼女は急に真面目な表情になり、悲壮感を漂わせている。

 私は黙って彼女の言葉を待った。

「〇っちしないと死にます」

「誰が?」

「あたしが」

「それは……」

 あまりにも真剣な表情をしていたものだから、私も真剣に答えなければいけない気がした。だから私も真面目に答える。

「ご愁傷様です」

「友人を見捨てるとか酷っ!! それでも友達かぁ!?」

「いや、その友達に性〇為求めてくるなよ。それになんで死ぬんだよ。ちゃんと説明してくれないと分からないんだけど」

「なんかー、呪われて? そんで今日〇っちしないと死ぬ設定」

「あー……」

 ……設定とか言っちゃってるんですけど。もうコイツはいったい何がしたいんだ。

 コイツの突拍子もない発言はいつもの事だけど、今日はいつにも増してヤヴァイ。

「さすがにさ、あたしも鬼じゃないわけよ。だからSE〇するのはあたしが勝負に勝ったらね?」

「……ちなみに私が勝ったら?」

「セック〇は諦める」

「さーて、帰るか」

 うん、付き合ってられない。私はカバンを持って、帰る準備をする。

 ……今、この教室に私達以外いなくてよかったぁ。誤解されるよね、こんな発言してたら。

 しかしコイツは人がいても平気でこういうこと言うから油断ならない。今のタイミングでよかったって、心の底から思うよ。

「待って!ほんと待って!一回だけ!一回だけでいいからお願いしますぅぅぅ」

 帰ろうとする私を逃がすまいと、彼女は足にしがみついてくる。さらに鬱陶しいことに顔をスリスリまでしてきやがった。

 しかしこの状態だと動けないのは確かで……。

「はぁ……じゃあ一回だけね」

「よっしぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 頭に響く程の大声でガッツポーズをして、喜んでいる。

 ……お前、どんだけ性欲強いんだよ。

「で、勝負の内容は?」

「鬼ごっこ!あたしが鬼ね!」

「さっき『あたしも鬼じゃない』って言ってなかった?」

 私のそんなくだらないツッコミはスルーして、彼女は説明をしていく。早口で。

「ルールは簡単!捕まったらそっちの負け。逃げ切れたらそっちの勝ち。制限時間は三十分。それじゃ、今からスた……グフッ!」

 私はコイツがスタートと言う前に全力で蹴り飛ばし、その場から離脱する。

 あいつの目論見は分かっていた。スタートとか言って、あの状態で捕まえたとか言うつもりだったのだろう。あいつはそういう奴なのだ。

 だが今までの経験上、私はあいつの性格を理解していたため、察して行動できた。理解……したくはなかったけども。

 私は全力で走る。

「待てぇぇぇぇぇぇぇぇい!!」

「復活早っ!」

 後ろから迫ってくる鬼に焦りが募る。

 あいつ運動神経だけはいいからからなぁ!

 『一回だけ』なんて言ったことを今更ながらに後悔した。

 ︎︎こいつはやると言ったらやる。どんな事でも。

「絶対捕まえてえっ○するっっっ!!」

 ︎︎大声でえっ○とか叫ぶな。恥じらいとかないのか?そりゃ無いよなぁ……あったら初めからこんなことにはなっていない。

 しかしこのまま悠長にしてる場合ではない。このままでは殺られる……いや、ヤられる。

 考えろ、考えろ! 私の貞操がかかっているんだ。

 ︎︎私は後ろを振り返り、隣の教室を指指す。

「あ、あそこにかわいい女の子が!!」

「え、どこどこ!?」

 ︎︎あいつは足を止め、キョロキョロと見回している。

 ︎︎正直こんな手に引っかかる馬鹿なんていないと思ってた。だからただの悪あがきだったのに上手くいってしまい私の方が困惑してる。

「こんな手に引っかかる奴いたんだ……」

 ︎︎は?てか可愛ければ誰だっていいのかよ。

 ︎︎今のうちに逃げればいいのに、私はピタリと足を止めてしまう。

 ︎︎未だにキョロキョロ探してるあいつを見てると、なんだか無性にムカついてきた。

「他の女とえっ○すればいいだろばぁぁぁぁかぁぁ!!」

「はぁ!?なんで!?」

 ︎︎なんでコイツが驚いた顔してるんだよ。

「えっ○出来れば誰でもいいんでしょ」

「え?いやいや、好きな女以外とはえっ○したくないけど」

 ︎︎キョトンとした顔で私を見つめてくる。

「でもかわいい女の子いるって言ったらめっちゃ食いついたじゃん!」

「それは目の保養だし?でもえっ○したいのは好きな人だけだよ」

「好きな人?誰が?」

「目の前にいる人」

「私?」

 ︎︎コイツはあっさりと頷く。

 ︎︎なるほどね、私が好きだからえっ○しようって言ってきたのね。納得、納得…………出来るかぁ!!

「好きなら最初からそう言えよぉぉぉぉっ!!」

 廊下で私の絶叫が響き渡った。

 ︎︎告白が先でしょ。馬鹿なの!?ああ、馬鹿だったわ、コイツ。

 ︎︎まあこんな奴を好きになってしまった私もどうしようもなく馬鹿なんだろうな。

「私も好きだよ、ばーかっ!!」

 ︎︎私の言葉を聞いて彼女は驚いて固まっていた。しかしハッと我に返ると、彼女は嬉しそうに私の肩にぽんっと触れる。

「捕まえーたっ!」

 ︎︎――私の完敗だ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

あたしが勝ったらえっ〇しよう kao @kao1423

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ