善意の総量

（二）-9

　とにかく、彼らはしつこい。しかも私を見ると「うるせえよ、ババア」と言いたげな目で見てくる。新宿では実際にそう言われた。

　彼らは街頭の女性を捕まえて、アルバイトなどの勧誘をするスカウトマンだ。もちろんそのアルバイトというのは一般的にイメージされるようなものなどではない。

　だから、私は老婆心ながら、綾音ちゃんとの間に無理矢理割り込み、男性の甘言から綾音ちゃんを守らねばならなかった。

　彼らはどぎまぎしている綾音ちゃんを見て、押せばいけると考えるのだろう。私が募金箱とともに二人の間に無理矢理割り込んでも、早口の甘言でまくし立ててくる。

（続く）