トレジャーハンター③
しかし それはキャンディとカーラも同じだったようで、そのまま言葉の
これ以上 俺を追求したら信号機トリオの言葉を疑うことにもなる。
それで場を悪くするほど、彼女達は空気の読めない性格ではなかった。
「お姉ちゃん達が、そう言うなら……」
「そうですね。ヘンなこと言って、すみませんでした」
と一応言ってくれたものの、2人の俺に対する疑心はは消えてはいないだろう。
「じゃあ、もうファイトマッチは勝ち確ってこと?」
俺達の間に流れる不穏さになど気づいていないアカネが、楽し気に会話に割り込んでくる。
今ばかりは、こいつの能天気さが有難かった。
「ああ、小林達がこれ以上の装備を持ってるとは思えないしな」
更に、向こうは俺達を舐めきっているはずだ。
「そっか。……でも それじゃ、強い武器があれば誰でも勝てるってことじゃん」
ポツリと呟かれた声に、ちょっとだけ息を飲んだ。
強い武器さえ持っていれば格上相手に簡単に勝ててしまうなら、ゲームとして成り立たない。
それが起こっていないのは、やはりチートな武器やアイテムなんてものはそうそう手に入らないようバランス調整されているからだ。
そう分かっているからこそ、キャンディとカーラは不審に思っている。
「そ、うだな……」
「それなら、ヒロカお手柄すぎるね」
言葉を濁す俺に代わり、ミドリコがヒロカの肩を叩く。
「やっと私も皆の役にたてたかな」
けれど、ちょっと はにかむヒロカの姿はなんとも微笑ましかった。
「それなら、ファイトマッチはヒロカお姉ちゃんが出場したらどうかな?」
そんな中、横から提案したのは意外にもキャンディだ。
「え?」
「こっちから出す3人のうち、2人はミドリコお姉ちゃんとアタルで決まりでしょ。なら、最後の1人は武器を見つけたヒロカお姉ちゃんでいいんじゃない?」
その顔を見下ろすと、いつも変わらぬ表情がヒロカを見上げている。
どうやら俺への疑惑は
「でも……」
そんな提案をされたヒロカは逆に戸惑っているが、キャンディの言うことは一理ある。
今回のファイトマッチは、3対3の対戦。
プレーヤー同士はレベルランクが30位以内でないといけない。
小林達の換算ランクは10,001。こちらもそれに合わせなければならないが、いつもパーティー入りしているカーラはレベルが高すぎるので今回は除外となる。
そうすると、ヒロカ、アカネ、キャンディの中から1人を選ばなければならないが、戦闘力という点では誰でもどんぐりの背比べだ。
「それはいいですね。幸いこれらの武器はレベル縛りもないですし、使い方さえ覚えればヒロカでも全然戦えますよ」
カーラも言い添えてくれた通り、俺は誰でも使用できる武器を選んで埋めておいた。
武器の力が全てを支配してしまう以上、誰が戦いの場に出ても結果は同じになる。
ならば、その武器を見つけてきたヒロカが指名されるのは自然なことだ。
「私で、いいのかな?」
チラリとこちらを見上げる瞳に、俺は頷く。
「ああ、いいと思う」
そう答えると、嬉しそうな顔が笑い返す。
「じゃあ、やってみようかな」
そんなヒロカの言葉で、ファイトマッチに参戦するメンバーが決まった。
俺、ミドリコ、ヒロカの3人で小林達へ挑むこととなる。
「作戦たてましょう!」
「いや、作戦って程のものも必要ないと思うけど」
「勝ったら祝勝会やる?」
そんな会話が楽しそうに交わされ、なんとなく
俺が勝手にファイトマッチを申し込んだことも、都合よく武器を見つけてきたことも
とりあえず この場を脱したことに安堵するが、それは表面上で ここにいる誰もが少なからず疑問を抱いているのかもしれない。
一見 丸く収まったように見えても、これでは いつ爆発するか分からない時限爆弾を抱えているようなものだ。
……この状況を根本から解決するには、どうすれば良いか。
「あ」
ワイワイと盛り上がる皆の様子を眺めていた俺の脳裏に、あるアイディアが降って湧く。
ちょっと強引すぎる気もするが、一方では これ以上ない対処法のほうにも思えた。
どちらにしろ、“それ”を行うにはある人物からの助言が必要となる。
この後、アタルをログアウトしアマテラスでログインした俺は、ある男の元へと向かった。
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