天保山奇譚

烏目浩輔

プロローグ

 ※プロローグ



 奇怪な現象が異常なほどよく起こるという場所がある。大阪市港区にある天保山てんぽうざんハーバービレッジもそのひとつだ。怪談蒐集家かいだんしゅうしゅうかのあいだではよく知られた話である。


 天保山ハーバービレッジは一九九〇年にオープンした海辺の複合型レジャースポットだ。関西最大の水族館『海遊館かいゆうかん』、百メートル以上の高さを誇る『大観覧車』、大阪港を周遊するクルーズ船『サンタマリア号』、さまざまなショップが集まる『天保山マーケットプレース』。

 子供から大人まで楽しめる人気の施設が揃っている。


 また、施設名についている天保山というのは地名ではない。海辺の一角に人工的に土を積みあげて築いた山の名称であり、標高四・五三メートルの日本で二番目に低い山だ。人工の山だと聞くとどこか近代的に感じるが、天保山が築かれたのはずっと昔のことだ。江戸時代の天保てんぽう二年頃だといわれている。天保に築かれた山であるから天保山と名がついた。


 天保山ハーバービレッジはこの天保山に隣接する。また、海辺の施設であるから海にものぞんでいる。山や海に怪異が集まりやすいというのは、オカルト界隈では常識と言ってもいい話だ。天保山ハーバービレッジで奇怪な現象が頻繁に起こるのは、山と海に近接しているからではないかと考えられている。



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