KAC20247 赤、緑、青は、現実では白にならず、闇に落ちる。

久遠 れんり

第1話 勇者になるべくダンジョン攻略

 勇者になるべく、ダンジョン攻略をする臼髪 元樹うすかみ もとき

 最後の赤のダンジョンを制覇。

「これが最後の宝玉」

 そうして、目の前に浮かぶ宝玉を胸に。



「ようこそ、いらっしゃいました」

 翔は目をさます。


「俺は確か学校で……」

 そう彼は、学校で上階へ上がっていく女の子のスカートを覗こうとして、走って行き。彼女が振り返りそうだから、あわてて下り側へと隠れるように身を翻した。

 だが、足を踏み外し、確か落ちた。


「どうして?」

 そんな彼に、彼女はにっこりと笑顔で伝える。

「あなた様は、サタンブラッディ王国へ召喚されました。勇者候補でございます」

「勇者? ふざけるな。元に返してくれ」

 その瞬間彼女は、へにょっと眉が落ち、悲しそうな顔になる。


「帰りたいと仰るという事は、きっと素晴らしい世界なのでございましょう。ですが、あなた様が帰ってしまわれたら、我が国は…… きっと今以上にひどいことになります。ええ、そうですわね。勝手にこちらが呼び出しただけの事。あなた様には、全く関係の無い話。この国が、極悪非道なあの国に…… きっと私も、攫われ死んだ方がましと思える事を…… そうですわね…… 返還の儀式を。何の罪もない、民の命を百人ほど犠牲にして、あなたを元の世界へ帰しましょう」

 その多少大根な演技を見ながら、考える。


 多少脚色が入っていても、最悪な事は間違いない。

 向こうへ帰っても、彼女はいなくて勉強も出来るわけじゃない。


「ちょっと待ってくれ」

「何でしょうか?」

 先ほどまでとは違い、少しご機嫌が悪い。

「考えたのだが、こちらへ来たときに。その特別な力とかが備わっているとかあるのか?」

「当然。ありますが。使わないなら意味の無いもの。召喚でも千人近くの人命を失ったというのに」


「なら、やってみるよ」

「はっ?」

「その勇者」

「えっっ。本当でございますか?」

 そう言って、躊躇無く抱きつかれる。


 胸が押しつけられ、その触れた感触が俺の頭を突き抜ける。

「ありがとうございます。これで救われます」

 流れる涙を、なぜか人の胸に拭き付ける。


「姫様。お心が変わらぬ間に、能力のチェックを」

「ああ、そうでした。この方が、突き放しからの、懐柔などと言う高等テクを使われるので、少し心臓がバクバクで」


 やって来たのは、水晶玉三十センチくらい。


「これにお手を」

 そう言って、周りから人が離れる。

 手を添える。

 割れるかな? そんな期待をしながら触るが、色々な色に変わるだけ。


「おお。これは素晴らしい」

「ええ、属性すべてに対応。えっ…… あのお。名前を、そう言えばまだ」

「ああ、ごめん。臼髪元樹。元樹と呼んで」

「元樹様。魔法の基礎は私がお教えいたしますので、頑張りましょう」


 そうして彼は、部屋に案内をされた。


「どうでしたか?」

「ふむ白色はない。後は力。あのダンジョンを制覇すれば、自ずと器は見えよう」

「使い物になれば良いのですが。いつまでも王が不在では」


 そうして、元樹は頑張った。

 姫様だけではなく、お付きの者とも。


「ここは、てんごくやぁ」

 そんなことを言いながら。


「それでは、行ってきます」


 彼は今から、ダンジョンに挑む。

 試練の三色ダンジョン。


 赤、緑、青。

 先ずは青から。

「この中では、水属性のモンスターが発生いたします。ウオーターカッターにはお気を付けください」

「分かった。行ってくるよ。リリス」

 彼女の見送りを受け、その一歩を踏み出す。


 盾を上手く使い、受け流す事で、以外と攻撃が流せる。

 魚が飛んできたり、色々来るが、そのたびに体が熱くなり何かが入ってくるのがわかる。


 途中で、ヒト型の魚。

 そう魚に足が生えた、気持ちの悪い奴が襲ってきたので倒したが、禁忌感はなかった。

 そしてその次は、魚にオッサンの上半身が生えた奴。

 これも問題ない。


 次は、鱗の生えた、オッサン達。


 そして最下層らしいが、なぜか貝殻に乗った女の人が怒っていた。

「良くも我が子供達を」

 って。襲ってきたのに、倒さないとこっちが殺される。


 すべて、攻撃を躱すと、貝殻を盾にして、攻撃してくる。

 色んな意味で、少し前の俺ではやばかった。


 かわいそうだが、揺れる双球の間に剣を突き立てる。


 その瞬間に、黒い光が天に昇る。


 そして目の前に宝玉が浮かんでいた。


 手を伸ばそうとすると、強制的に胸にぶつかってくる。

「ぐはっ」

 そのまま、二メートルくらい吹っ飛ばされる。


 そして、気が付けばダンジョンの外。

「おおっ。おめでとうございます」

 見ると、入り口の色が消えていた。


 少し、遊んで次のダンジョン。


「緑のダンジョン。ここは…… 」

 リリスが言いよどむ。

「こちらは、森と虫たちの楽園となっております。毒も持っていますのでお気を付けください」

 侍女が教えてくれた。


「ああ。虫たちの楽園だな」

 リリスが言いよどんだのはこいつのせいか?

 全長一メートル近いゴキ。

 それが、ゴキ・ゴキ・ゴキ・ゴキ・ゴキ・ゴキ・ゴキ・ゴキ・ゴキ・ゴキ・ゴキ・ゴキ・ゴキ・ゴキと言うくらいいる。


 一気に燃やす。

 するとだな、すごく香ばしくて美味しそうな匂いがするのだよ。

「だが、美味そうでもゴキはゴキ」

 名言風の迷言を残し、階段を降りた。

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