第5話【kitchen あぐぅ】

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ノリ? はいはーい♪

 うん、3人とも準備出来たよ

 分かった今から降りるね」


 電話を切ったノゾムさんが振り返る


 いよいよだ!

 初ホストクラブ潜入!



「さて、見学に行こうか?」


「「「 はいっ!」」」




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 ヘアメイクが完了した俺たちは

 着替えを済ませ店に降りる



心優ミユウさーん、どう?」


 ノゾムさんが俺たち3人を

 ババーン!と大袈裟に紹介する



「おっ、3人共 いいじゃん♪

 今日は接客はしなくていいから

 キム兄弟の後ろで見学しててね」


「「「 はい 」」」


「じゃあ 僕も準備してくるから

 則人ノリト、あとは頼む」


「はい」


 キョロキョロと店内を見回し

 落ち着かずソワソワしていると



「おい、バイト」


「「「 はい 」」」


「携帯の電源切って寄越せ

 営業中は私が預かることになってる

 1人ずつこの中に入れて名前書いて」


「あ…はい」


 チャック付きポリ袋に入れ

 袋に名前を書いて木村さんに渡す



「… お前らの源氏名だけど

 本名と変えたいか?」


「あ、源氏名使うんですね?

 俺は まんまでも大丈夫です」


「俺も、問題ないです」


「我は…」


「お前は そのままが嫌なら

『ゴメス』か『ジョージ』だな」


「「 ゴメス!? ジョージ!?

 テピョン…( ゚∀゚)・∵ブハッ!! 」」


「ごめすも…じょおじ も嫌だ〜(´;ㅿ;`)」


朴木ホオノキ 樹明タツアキ…ジュ…『ジュミン』

 宮久ミヤヒサ 空雅クウガ…は…『クウガ』

 ムラ テピョン…『テピョン』

 コレでいいだろ、名前覚えろよ」


「ジュ、ジュミン!?」


「…タツアキは呼びにくい

 もう変更は無しだ

 ジュン、コレ金庫に入れといて」


「はーい」


 なんか…木村さんて…怖ぇ…

 イケメンだけど冷たい感じがする…



「バイト、ザッと説明するぞ

 名前の呼び方は全員ホストは源氏名で

 私たち黒服は下の名前『さん』付けで呼べ」


「「「 はいっ 」」」


 そして…木村、じゃない

 則人ノリトさんから開店前の準備と

 開店から閉店までの流れを聞き

 接客についてはホストに着いて覚えろと



「当分の間は私が見ててやるから

 慣れたら少しずつ

 自分の色を見つけてやって行けばいい」


「「「 分かりました 」」」


「あとは実践あるのみだ

 今日は見学してればいいらしいから

 あ…今日は何時までいる気だ?」


「さぁ?何も言われてないんですけど…」


「ふーん、じゃあ帰りたくなったら言え」


「え?…あ、はい」


 なんか…


 歓迎されてないのかな?

 心優ミユウさんとの差がすごいな…




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【club月光 OPEN】


 着替えて降りて来た心優ミユウさんは


 黒いタートルネックに白シャツを重ね着

 ストレートの黒いパンツに黒の革靴

 というシンプルなスタイルだ



「うぉおおおおお!

 ホストかっけぇ( *°∀°* )」


 則人ノリトさんとジュンさんの後ろに

 隠れるように観察する俺たち



 心優ミユウさんとノゾムさんが

 それぞれ女性客を相手に

 楽しそうに過ごしている



 俺もあんな風に余裕な感じで

 話したりできるようになるかな…



 俺は意を決して後ろにいる

 テピョンと樹明タツアキを振り返った



「…なに?」


「俺ココで No.1目指す!(ボソッ)」


「トップを目指すのは良きことだ」


「だよな、テピョン!(ボソッ)」


「なら俺はナンバー (ボソッ)」


「ウチの No.1は心優ミユウさんだ (ボソッ)」


 ジュンさんが会話に入って来た



「お前たちが何年かけても抜かせないよ

 まぁせいぜいさせてもらうんだな」



 ジュンさんにキッパリと言われ

 ちょっとムカッと来た俺は

 心優ミユウさんをよぉ〜く観察した



 今は黒縁のメガネをかけている心優ミユウさん

 スタイルは基本は変えないが小物は

 接客するお客様の好みに合わせるらしい



 話している時の視線や表情

 ……そして仕種しぐさ



心優ミユウさん…

 かっこいいっすぅううう♡‬


 そして心優ミユウさんが俺の目指す

『イケてるおとこ』の理想像となった


(⑉︎• - •⑉︎)♡心優ミユウさん…



空雅クウガ お前…そんなんだから

 カワイイって言われんだよ」


「あ"ん?( ˙-˙ ꐦ)カチン」


「なんだよ自覚なかったのか?

 同じ学部の奴ら みんな言ってるぞ?」


(((uдu*)ゥンゥン(テピョン)



「なん……だとう?

 し……知らなかった…( ̄Д ̄;) ガーン」


 そして俺たちは閉店時間まで

 ホストのお仕事を観て聴いて

 させてもらった




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 【club月光 閉店後】


「まだ時間大丈夫なら飯行くか?」


 心優ミユウさんとノゾムさんに連れられ

 店から少し離れているけど美味いからと

 心優ミユウさんたち馴染みの大衆食堂に

 連れて来てもらった



“ kitchen あぐぅ ” と書いた暖簾を上げ

 軋む引き戸を開けて中に入る



 古くてこじんまりとした店

 手入れは行き届いた感じで

 落ち着いた雰囲気

 こういう店は嫌いじゃない



「いらっしゃいませ

 心優ミユウさんノゾムさん、何名様ですか?」


 ハスキーボイスと笑顔で応対する

 ブルーのインナーカラーを入れた

 ボブヘアの若い店員



アオイちゃんお疲れ様

 5人だけどいいかな?」


「今片付けますから、こちらへどうぞ」


 アオイと呼ばれたその子は

 2人の名前を呼び、とても親しそうで

 この店に長く勤めていることがわかる


 ・

 ・

 ・


「お待たせしました

 こちらお通しと、焼酎です( *´꒳`* )」


( ˙꒳˙ )( ¯•_•¯ )( '-' )じー



「…はじめまして( ˙꒳˙ *)

 月光の新人さんですか?」


( ˙꒳˙ ))( ._.))( ._.))コクコク



「アルバイトのアオイです

 よろしくお願いします(*_ _))」


アオイ、これ出してあげて〜」


「はーいママ、皆さんごゆっくり( *´꒳`* )」


 ٩( ˙꒳​˙ *)ว三すたたた



 アオイちゃん、カワイイなぁ♡

 年は近そうだけど いくつだろ?



 ボーッとアオイちゃんを目で追っていると

 心優ミユウさんに話しかけられた



空雅クウガ 顔に出過ぎだって…(*`艸´)クク

 客前では表情管理気をつけろよ?」


「うわ…はい、すみません/// 」


「テピョンはもうちょい

 表情豊かにしないとなぁ」


「うむ…分かり申した」


 テピョンは美形だが

 基本的に無表情だからな

 流石、心優ミユウさんはよく見てるなぁ



樹明タツアキは…まずコンタクトだな」


「……」


 心優ミユウさんが話しかけても

 樹明タツアキが反応しない


 パチンッ


 目の前で指を鳴らすと

 やっと気が付いたみたいだ



「…いつまでも見惚みとれてない!

 そのグルグルの下、♡になってないか?」


「あ……すみませんでしたっ」


 アオイちゃんに見惚みとれていたみたいだ



樹明タツアキはホストに向かないかもなぁ

 真面目すぎるんだよなぁ…

 でも真面目さが悪い訳じゃないから

 自分のやり方を見つければいいし

 一緒にやって行こうな?」


「はい、よろしくお願いします!」


 ┏〇ペコ───ッ!!!



「だから真面目かっつうの…アハハ(≧∀≦*)」


 気がつくと店内には

 俺たちだけになっていた



「んで? なんで3人はウチで

 バイトしようと思ったの?」


 その問いに答えようと口を開くと



「あら〜意地悪な質問しちゃってぇ」


 カウンターの向こうから

 高くて澄んだ可愛い声が飛んできた


 アオイちゃんではない声だ



「そんなの “ ” と “ ” に

 決まってるじゃないのぉ」


 声は可愛いが言葉は辛辣…


 手を拭きながらカウンターから

 エプロンを着けた女性が出てきた


 落ち着いた髪色

 綺麗なストレートの髪を後ろで

 1つにまとめただけのシンプルな髪型

 白い肌 ナチュラルな薄いメイク…


 最近は大学でもどこでも流行りなのか

 ギャル系の派手なメイクが多いからか

 なんか……新鮮でいい…



「あら、可愛い子たち♡

 月光の新しいスタッフ?」


「うん、新しいアルバイト

 3人とも H大の1年だよ」


「へぇ〜心優ミユウの後輩ね♪」


「お前ら自己紹介しろ

 この店のママ、あこさんだ」


 この人が ママ……

 ママって言うから

 もっと年配の女性を想像してた


 年上には間違いないだろうけど…

 この古い店のママにしては

 若くて綺麗な人だな……



「「 ホオノキムラ タツアキピョンですと申す

 者なりよろしくお頼む願いします」」


「( °꒫° )…アホかお前ら

 1人ずつ喋れよ…」


「 ちょ……待って…( ゚∀゚)・∵ブハッ!!

 キャラ立ち過ぎでしょ!

(*つ▽`)っ)))アハハハ♪ やだもう可愛いわぁ♡」


 あ…笑うと目じりにシワ…


 でも…なんか…

 すごく自然でいいな

 笑顔……可愛いかも…






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