序章:前世で戦いあった双子巫女は転生後もその宿命から逃れられない-お姉ちゃんを手に入れてこの世界もろとも独占するのは私だからね?

MERO

序章:前世で戦いあった双子巫女は転生後もその宿命から逃れられない-お姉ちゃんを手に入れてこの世界もろとも独占するのは私だからね?

 同じ顔した少女に、私は断崖絶壁だんがいぜっぺきで追い詰められている。

 その少女が私に向かって言う。

「お姉ちゃん、私と一緒にいこ? お姉ちゃんと私でこの世界を作り変えようよ。私たちならそれができるよ」


「もうやめない? 私はあなたともう争いたくない」


「そう、私と一緒にきてくれないの、わかったわ……それなら、お姉ちゃんを力づくで奪うしかないってことね」

 そう言って彼女は赤い石を持ち、私に向かって指で何やら呪文を唱え始める。


 私は頭上を見上げて神に最後の祈りをした。

 首から掛けている青い石がついたネックレスをぎゅっと掴み、私も呪文を唱えた。

 それは対の魔法。唱えてはならないと言われた最後の魔法。


 少しずつ、気道が閉じていく様子を感じる。

 息も絶え絶えになって、私たちの足元はふらついている。

 

「おね…え…ちゃ‥ん……が……とな‥…える……なんて……」

 

 ……そうだね、わかってほしかったの、私は――――。


 そう思う途中で彼女は私に倒れ、私も意識が途絶えた。

 そのまま私たちは崖へと落ちていった。

 

 ◇ ◇ ◇

 

 またあの夢。

 月曜日の朝に重い頭を上げて私は身体を起こしてはぁとため息をついた。


 私に妹はいないのに、最近よく見るあの夢はいったい何を示しているの?


 ◇ ◇ ◇


「季節外れだが、転校生だ」


結城ゆうき深朱みあかさん、簡単に自己紹介してください」


「初めまして、結城ゆうき深朱みあかと言います、朱に交われた赤くなる、の朱がみあかのあかなので早くこのクラスに溶け込みたいです。よろしくお願いします」


 背丈は低いがその分なのか、顔は小さく目がくりっとした明るそうな女の子が頭を下げた。


「じゃあ、席は小波あおいの隣」


 そういきなり名前を呼ばれて私はぴくっと身体を動かした。

 一番後ろの私の隣の席は空いている。私がそう考えているうちに転校生の女の子がやってきて着席した。


「小波あおい?……さん よろしくね」


 そういって結城さんは少し笑みを浮かべて会釈した。

 

 ◇ ◇ ◇


 休み時間になると結城さんの周りにはクラスメイトたちが集まった。


「結城さんはここらへんに住んでいたことあるの?」


「そうそう、3丁目の公園の横にある家だよ」


「えっ、それって大きな家じゃない?」

 

 そんな風に次々と友達を作っていく。横で楽しそうな空気を感じながら私は次の授業の準備をしていく。


「小波さん、まだ教科書もらってないからそれまで見せてもらっていい?」


 結城さんは私にそう言って、自分の机を私の机にぴったりとくっつけた。

 私は教科書を真ん中に置いて、次の授業のページを開こうとしたら勝手にページがめくれて該当のページが開かれた。


 これはどういうこと?

 

「どうしたの? 小波さん?」

 

 結城さんは声をかけて私の顔をみた。


 不思議じゃなかったのかな?

 彼女は今の出来事を見てなかったのかもしれないとも思った私は「なんでもないよ」と取り繕った。

 私の反応に結城さんは少しがっかりしたような顔をした。

 

「そう…………なのね」

 結城さんは小さくそう呟いた。

 

 ◇ ◇ ◇


 部活を終えて帰ろうとして下駄箱と校舎を繋ぐ渡り廊下を歩いている時、その横に連なって存在する体育倉庫から声が聞こえたような気がした。私は上履きのまま、体育倉庫に向かい、扉を開けた。

 

 中は真っ暗、そう思った途端に両手首を掴まれて後ろに回された。

「古典的なものにひっかかるのね」


 くすくすという笑い声が聞こえる。


「なーあに、こんなに簡単だったなんて」


「誰? 手を離して」


うるさい。ふふ、意識はいらないのよ、あなたの身体はこさえあれば。さぁ……」


 そこで急に体育倉庫の扉が開いた。


「そこで何してるの?」


 外の街灯の光が入ってきて、そこには結城さんの姿が見えた。

 

「誰!?」


「……何してるの? 小波さん? え?」


 掴まれている私の姿をみた結城さんの身体が一瞬赤く光ったかと思ったら、「うっ」という声が私の背後の人から発せられて、手が離された。

 

 その様子をみた結城さんは私の手を取って外に向かって走り出したので、私も結城さんに足を合わせて走った。

 校門を抜けてもなお結城さんは走り続けた。息が上がり、もう走れないと思った私は繋がっている結城さんの手を強く握り、止まった。


「はぁはぁはぁ……ご……めん」


「……あ、気が付かなくてごめん。大丈夫?」


 息1つ上がっていない結城さんが私に聞いた。私は言葉が発せないぐらいの状況で、手で今は無理とアピールした。そうしたら結城さんはその場を立ち去った。そのまま息を整きつつ、周りを探したけど彼女の姿は見えない。

 

 あれ? そのまま帰っちゃった?


 茫然と、そのままその場に立っていたら、彼女がペットボトルを持って帰ってきた。


「休憩しよ」


 近くの公園で結城さんとブランコに乗りながら、彼女からもらった水を飲んだ。

 

「美味しそう、もう1本買ってくればよかった」


 そういう彼女に私はもらったペットボトルを渡した。


「私が口付けちゃったけど、飲む?」


 そう言うと彼女は嬉しそうに微笑んで「いいの?」と聞いた。


「もちろん、いいよ。結城さんに買ってもらったものだし」


 彼女はブランコを止めて、私に顔を近づけて目を見つめた。潤んだような綺麗な目に吸い込まれそうになった。


「そういう――――こと、じゃない」


 不敵な笑みを浮かべながらも、私からキャップが空いているペットボトルを取り、水をゴクリと飲んだ。舌をペロッと出して、いたずらっ子のような目で私を見たあと、ペットボトルの口をほんの少し舐めた。


 夕日に照らされた彼女のその姿は子悪魔みたいな茶目っ気とほんのりと上気した頬から緊張しているような様子を受けた。


 一瞬見惚れてしまって恥ずかしくなった私は何か話をしようと、ペットボトルのお礼を伝えそびれていたこと、助けてくれたことも思い出した。


「ペットボトル……あとさっきも……ありがとう。助けてくれたんだよね?」


「……ん」


「よくあそこに人がいるって気が付いたね」


「……そうだね」


 言葉少なに返す彼女はペットボトルを私に返してきた。

 私は受け取りつつ、キャップを付けていたら彼女が少し小さい声を出した。


「ありがと。ん――――、今はそのタイミングじゃないから、ね」


 意味深な言葉を発したので私は彼女の顔を見たら、満面の笑みを浮かべていた。

 

「よかった、間に合って。小波さんと出逢えてほんとによかった。あの……友達になってください」


「私でよければ……」


「あおいって名前で呼んでいい?」


「うん」


「ねっ、あおいは気が付いた? 私の名前にはあかが、あおいの名前にはあおって色が入っているよね」

 

「そうだね、たしかに赤と青だね」

 

 ◇ ◇ ◇


 この時の意味が、今の私ならわかる。

 ねぇ、深朱みあかはもうわかっていたんでしょう?

 既に深朱みあかには記憶と力が蘇っていて、その上で私と友達になりたいってそう言ったんだよね?


――――――――――――――――――――――――――――――――――――

連載用の1話目を投稿しました。

そのため、謎だらけで申し訳ありません!

KACが終わったらタイトルから序章を除いて別小説で投稿する予定です。

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