六人の魔法使いが現代に生み出されたことは、まだ誰も知らない。
月影澪央
第1話
はるか昔、この世界には魔法使いが存在した。
だがその魔法使いは狩りつくされ、生き残った六人の大魔法使いを除いて、魔法使いはこの世界から消えた。確かに魔法は人に危害を加えることができる。しかし理由もなくそんなことをするはずがない。仲間だからそう言えるのだろうけど、一般人からしたら脅威でしかなく、しかも時代が時代だっただけに公開処刑されたような魔法使いもいた。
そんな中かろうじて生き残った六人は、いつか魔法が必要になった時に困らないようにと自分たちの血筋だけは残そうと決めた。魔法使いがここまでやってきたことが消えたことによる被害が現れた時のために。
それから長い年月を経て、それは現実となった。
近年、原因不明の死や正体不明の怪奇現象が起こるようになった。おそらくもっと昔から起こっていたことだったが、それが技術の発展などに伴って世の中に知られるようになった。
その原因不明の諸々は、元々魔法使いが対処してきたアンデッドたちが原因のもので、もちろん魔法使いがいなくなってから一度数が増えていたが、六人の大魔法使いたちが子孫を残した後に命を懸けて構築した永久的に稼働する広範囲術式によってそれが抑えられていた。だがその効果が切れ、アンデッドは急激に増えた。しかも世界規模で。
それを六つの血筋の人間だけで対応するのは無理がある。魔法をちゃんと使うのもこの世代となっては初めてだし、教えてくれるのは大魔法使いが残した本だけだ。
そんな厳しい状況をどうにかしようと、大魔法使いの子孫たちの遺伝子を引き継ぐ子供を人工的に作り出す研究が始まった。
始まってから約二十年が経った今、しっかりと育った子供はそれぞれの血筋で一人ずつ、合計六人だけだった。多くの犠牲の上で育った六人だ。
だがこの六人を最後に、研究は打ち切られた。
理由は倫理的な問題。国家組織にバレて終わった。
もちろんその方法は倫理的には批判されるような内容も含まれる。絶対に世間に知られてはならない。だが、こうでもしないと世界が壊れる。関係者たちは仕方ないことだと割り切っていた。
魔法使いたちが呼ぶアンデッドとは、亡霊や怨霊、人々の強い想いから発生する幽霊のような魔物だ。一般人には見ることすらできず、抵抗などできないまま、いつの間にか死んでいる。基本的に人間が原因とも言える魔物だ。
それをどうにかしてやった魔法使いを消して、おかげで手が付けられなくなって困る、なんて自業自得だ。なのにまた魔法使いたちはどうにかしてやろうとしているのに批判されるなんて、この世界はどうかしている。
こうして生み出された六人は、定期的に世界の都市を回り、アンデッドの対処にあたっている。大魔法使いの子孫たちと分担しているが、とても間に合ってはいない。だが一度一斉に倒してしまえば、しばらくは被害が抑えられる。それでも多少の被害まで防ぐ力なんてなかった。
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