校閲
ま、私はこれでこのパーティーを抜けるからどちらでも良い……が。
いや待てよ? こいつ確か味方にデバフをかけられるとか言ってたな……? 仮にそれが事実なら、どういう理屈なのかは知らないが、酢マホ抜きで魔法が使えるようなもので――有用なのは間違いない。それに私の憶測が合っていれば、こいつは味方にデバフをかける以外でも使えそうなところがある。なので味方に引き入れておいた方が得策……? となると――ドク口とカエルにはパーティーを組ませておくべきか?
……とか考えていると、相変わらずの悪役令嬢っぷりとでも言うべきか。傍若無人なザラメ嬢は誰の許可を得た訳でもなく、私達のテーブルの空いてる席に勝手に腰を下ろしつつ。
「まあ良いですわ。靴を舐めるのは置いておくとして、あなた方の自己紹介をお願いしますわ。そうねぇ……まずはわたくしの靴を舐め損ねたあなた。あなたから自己紹介をどうぞ!」
と言ってザラメ嬢がスカしているのか、ワザワザ自らの後ろ髪に手を通してから私に手をかざす。もうなんと言うかこう――こいつはこういう性格なのだな……と、ちょっと馴れてきたのでそのまま自己紹介する事にした。
私は一つ頷いてから。
「私ですか。私の名前は力工ノレ。異世界から来たフリーランスのニートです」
「フリーランスのニートって、大別すればそもそもニートがフリーランスじゃありません事っ!? あ、いや、それよりも異世界人? あなた本当に異世界人ですのっ? 確かに先程から頭の中身は異世界人ぽいですけどもっ?」
と驚くザラメ嬢。まあ、褒め言葉と受け取っておこう……と思った私は至って冷静に。
「私というか我々全員異世界人です。あ、違った。私とカエルさんは異世界人ですけど、もう一頭は異世界類人猿です」
「異世界
驚愕の声を上げるザラメ嬢だが。
『ちょっと! 異世界ゴリラって私の事ですかっ! 今日は私ゴリラのマスクしてないんですけどっ!』
そのザラメ嬢よりデカい声を上げたのはドク口だったが……。あ、そうか今日は大仏マスクか。なら――
「すみません間違えました。残りの一人は異世界Great Buddhaでした」
「異世界グレート仏陀ッ!? なんでわざわざ大仏を英語にするんですのっ! 異世界人の考えている事がわかりませんわっ! 恐ろしいですわっ!」
うんこみたいな髪型してるヤツに言われたくはないな。とか考えていると横からその異世界Daibutsu。
『あ、誤解しないで下さい。異世界人みんながそんな思考をしてるんじゃなくて、その人が特殊なだけです』
失礼なヤツだな。私だけ特殊な
『まあ、でもいいです……ついでなんで次は私が自己紹介します』
と言いながら大仏マスクに手を掛けたのはドク口だった。
『私の名前はドク口で、こちらの世界に来る前は死神をしていました。因みに今は死神としての全ての能力を失っているので、今はただの一般的な巨乳美少女アイドルだと思って下さい』
と言いながら大仏マスクを脱ぎ去るドク口。当然その下から出てくるのはいつもの骨で。
「だ、大仏の下からガイコツが出てきましたわ。ど、どうやら死神で異世界人というのは本当のようですわね?」
ほぅ? ザラメ嬢にはこれ以上ない説得力となったか。まさかドク口の素顔がこんな役の立ち方をするとは思わなかったな? ただの死体予備軍というだけではなかったか。
としている中で。
「それで? 異世界ニート、異世界死神ときてあなたは何者なんですの?」
と、ザラメ嬢が視線を送ったのは当然残っていたカエルで、カエルは薄っすら微笑むと。
「はははっ。私はお二方ほどの肩書きはありませんよ。名前はミ・カエルと申しまして、異世界から転生して来た――。転生する前はトラックの運転手で、陰キャカフェに『リッチな豆腐』や『高級ごはんですよ』を運送していた普通のトラック運転手です」
「なるほど。それは確かにノレ様やドク口様に比べたら普通キャですわね」
とウンウン頷くザラメ嬢だが。
『いや陰キャや陽キャは聞くけど、普通キャって言う必要ないし……てゆーか改めてカエルさんの話聞いても全然普通じゃないし……』
と零しているドク口だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます