第30話 反省会 4
アンジュリーンとカミュルイアンが、ギルド支部の寮を出て自立したのは、アリアリーシャの転移してくる一年前の事で、もし、一年二人がギルド支部の寮で暮らしていたならアリアリーシャと出会えていた可能性が高く、今のレィオーンパードと同じように三人での活動が始まっていた可能性があったのだ。
三人に増えた方が活動の範囲も選択肢も増える事になるが、カミュルイアンは怪訝そうな表情をしている。
「あら、どうして?」
アンジュリーンは、何でなのか気になり聞き返す。
「そうだろう。アンジュは、無駄な買い物とかするから貯まらなかったじゃないか。アリーシャが居たら、きっと、止めてくれてたと思うし、そうなると、オイラ達の入学は早くなっていただろうから、レオン達より先に入学してたと思うんだ。場合によってはオイラ達が卒業した後になってたかもしれない。今のようにレオン達と一緒って事は無かったんじゃないかなぁ」
思い当たる事があるのか、アンジュリーンは面白くなさそうな表情をして黙ってしまう。
「それは、有るわね。そうなると」
アリアリーシャは、やっぱりそうだったのかと思った様子でアンジュリーンとカミュルイアンの顔を交互に見る。
「入学した時のパーティー決めの時にバラバラになったかもしれないか。それに、三人で落ちこぼれていたかもしれないわね」
自分の考えがアリアリーシャに理解してもらえたと思うとカミュルイアンは少しホッとした表情になる。
入学時にアンジュリーンとカミュルイアンをセットでパーティーに入れようとする生徒達はおらず、入学当時は激痩せ気味だったアリアリーシャを戦力外と見る生徒が大半だった。
また、パーティーとしてバランスが悪い事から、ジューネスティーン以外ならば、三人共バラバラになった可能性が高い。
「きっと、ジュネスのような人に巡り会えなかったと思うんだ」
「そうね。ジュネスは普通の人とは少し違っていたものね。他は即戦力になりそうな人に声を掛けていたのに、残った者同士でパーティーを組もうって誘ってくれてたものね」
ギルドの高等学校に入学した際、最初に行われたのは生徒同士のパーティーの結成だった。
メンバーを決めるのは生徒に任されており、魔法職であるシュレイノリアは引き抜こうと声を掛けられていたが、ジューネスティーンとレィオーンパードが一緒が条件とされてしまい、当時は体格も良くない男二人を含めて引き受けるパーティーは無かったため、諦めてしまうパーティーと、三人ではパーティーとして認められない事から分散するだろうと様子を見る者に分かれる。
そんな中、ジューネスティーンが、余っていたアリアリーシャと二人で居たアンジュリーンとカミュルイアンに声を掛けてパーティーの条件人数を満たすと誰もが戦力的に不利と見た者同士が集まったと見られていた。
しかし、半年ほどで学年上位のメンバー達となり、後期の武闘大会では優勝やらベスト8やらと校内でも上位となる珍しいパーティーだった。
「そう言えば、兄ちゃんが言ってたけど、人には長所短所が有るから、長所を活かして短所を補えば何とでもなるって。人の長所を見極めれば必ず力になるし、後の訓練で短所を補えばいい。学校に入ったのは、その時間を作れるし、それ以上にメンバーになれる人を揃えられる事が大きいから、学校での時間は短所を補う為に使えば良いとか。そんな事を言ってたよ」
レィオーンパードの言葉を聞くと三人はお互いを見る。
「そうね。カミューも力が付いているから、剣を使った前衛にもなれるわ」
「アンジュだて、誰も引く事が出来なかった弓を最初に引いてたじゃないか。それに、さっきだって最初の陣地を決める時の居合斬りだって大したものだったよ」
アンジュリーンにしてもジューネスティーン達と一緒に昼のトレーニングを行っていた事もあり、アリアリーシャには及ばないが女子の中では上位の成績を残していた。
その事を指摘すると、アンジュリーンは嫌そうな表情をする。
「な、何よ。私がムキムキだって言いたいの!」
可愛くありたいと思う気持ちから、見つけた服を購入したいと誘った狩だった事もあり、カミュルイアンの言葉から想像される体型と購入しようとしている可愛い服を思い浮かべ似合わないのではないかと思ったようだ。
「違うよ。冒険者として力を付けたって言いたいだけだよ。ほら、アリーシャだって格闘戦では女子の中ではトップだったけど、時々、男の人だって投げ飛ばしていたじゃないか」
「あ、あれは、男達が鼻の下を伸ばして覗き込んでいたからでしょ。油断させて投げ飛ばしたのよ」
「何よ。私が胸を見せびらかして男達を投げ飛ばしたと言いたいの?」
「あ、いや、そう言う事じゃなくて」
「じゃなかったら、何だって言うのよ! 私、アンジュには練習でも投げられた事無かったわよ。それに胸の谷間なんて見えないようにシャツも着ていたでしょ」
事実を言われて言い返せないでいる。
「姉さんの実力は本物だったよ。俺だって油断してたら投げられてしまったからね」
「オイラも同じだったよ。気を抜く事なんて出来なかったんだ」
二人に言われるとアンジュリーンも言い返せなくなる。
「わ、悪かったわよ。あやまるわよ。確かにアリーシャは強かったわよ!」
アンジュリーンとしては認めたくない事実だった。
格闘技や武闘大会など、実技面においては一度もアリアリーシャに勝てた事が無かった。
認めたくはない事実を突きつけられたが、反論できる余地は残っていなかった事と、これ以上言い訳をしては後々に響きメンバーの中に不穏な空気を残す事を嫌ったようだ。
「ごめん」
「きっと、アンジュ達が十年早く転移していたら、私とアンジュの実力は逆転してたでしょうね。成長の違いが結果として現れただけでしょ。それに私はジュネスと同じメニューをこなしてなかったら余計な部分が増えていたでしょうね」
そう言うと自分の腹部を摩った。
「背が伸びなくなると、どうしても横に付きやすくなるのよねぇ」
切実そうに言うとアンジュリーンを羨ましそうに見た。
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