第3話 俺の彼氏の浮気調査

あれからニか月後。


「ケイタ、早乙女が浮気してるかもしれないんだ。調べてくれる?」


「早すぎない? それ、相手の問題じゃなくて、マモルに何かあるんじゃないの?」


「俺がウブだから、物足りないんだよ、きっと」


「俺には刺激が強すぎるセリフだな。で、今度はどう調べるつもりなの?」


「え? 例の人形を持ってきちゃダメ?」


「そしたら、お前と浮気相手の2パターンを見る羽目になるかもしれないじゃん。そんなの見せつけられたら、俺は被害者同然だよ」


「うーん、じゃあちょっと違う策を考えるよ」


「もう、浮気相手ありでもよくない?」


「やだよ。俺以外とあんなに楽しく過ごしてるなんて許せない」


「うらやましいような、うらやましくないような。いや、うらやましくない」


「お前も恋人ができればわかるよ」


「上から言われるならまだしも、斜め上から言われるのはイラッとするな」



♢♢♢



ある日、校内の廊下で、マモルと早乙女が一緒にいるところに遭遇した。

早乙女は背が高くて、軽音学部でベースを弾いているらしい。

チャラかっこよかった。


軽く挨拶を交わしたら、ドヤドヤと廊下を歩く集団が来た。

避けたときに、早乙女のズボンに偶然手が触れた。



♢♢♢



「話って何?」


「今日、たまたま早乙女のズボンに触っちゃったんだけど」


「まさか、お前も早乙女を狙って……」 


「ないよ。恋は盲目って、よく言ったもんだな。パンツの話だよ。早乙女は、自分のでもなく、お前のでもないパンツを履いていた」


「そんなことわかるの?」


「ちょっとしか触ってないから、それくらいしかわかんないけど」


「あいつ、兄弟いないから……。浮気相手が置いてったパンツ穿いてるとか?」


「かなぁ……」


「ちょっと調べてみるよ」



♢♢♢



それから一週間後。

マモルは箱から七つの袋を取り出した。



「あいつのアパートを、直近の一週間コロコロをかけて掃除した。そこについていた髪の毛から浮気を押さえられないかな」


「微妙に本格的だな。なんか早乙女が気の毒になってきた」


「目星はついてるんだ。浮気相手はバンドのギター担当の金髪だと思う。だから、まず金髪を視てくれよ」



そう言って、マモルは袋からコロコロの使用済みシートを取り出し、のり側の面を開いた。


ケンタは、ちりやら髪の毛やらの中から、金髪を見つけて触れた。


……

………


「浮気……してると思う……」


「やっぱり……」


「浮気っていうか、お前の方が遊びみたいだよ」


「マジか! まあ、言われてみれば、たしかに遊ばれている感はあった……。ほら、俺にとってそっちの世界は全部初めてのことだから……」


「あぁ、うん、あんま聞きたくないな、その体験談。で、どうするの?別れるの?」


「そうだな……遊び相手なら、俺が離れれば追ってこないだろうし。別れようと思えば別れられる」


「そうなんだ。まあ、がんばってね……。俺は自分とは違う世界を見せつけられて、疲れたよ……」



♢♢♢



数日後



「今日、金髪の男と一緒にいたけど、あれが早乙女の彼氏?」


「まあ、早乙女の彼氏とも言うし、俺の浮気相手とも言う」


「どういうこと?」


「この間、金髪ギターのあいつともいい雰囲気になっちゃって」


「……マモルって、流されやすいんだな。もう、浮気じゃないよね。恋人のシェア?」


「人類愛かな」


「他人を巻き込まないで」


「まあ、トリあえず事件は解決だよ」


「解決してると言えば解決してるかな。平和的に。もう、俺、お前のパンツ触れないや。3パターン視る可能性があるんでしょ?」


「4パターンだよ。早乙女と俺、金髪と俺、早乙女と金髪、あと3人で、っていう可能性が残っている」


「可能性……残ってるんだ」


「お前が俺のパンツに触れるとき、それはパンドラの箱を開けることと同じ」


「希望に行き着く前に、お前の男性遍歴を全部見なきゃいけないの? ホント、意味ないやこの超能力。そもそも最後の希望ってなんなの?」


「人類愛」


「お前のパンツが、俺の超能力の価値を超えるときが来るのか……」


「お前に視られたからって、俺は怒ったりしないから。たまにはのぞきに来てよ」


「行かないよ。偶然でも視たくないよ。俺、のぞきの趣味はないからね」


ケイタはそっとマモルと距離をとった。


-第三話 おわり-


良かったら、こちらのKAC2024『箱』もどうぞ▼

https://kakuyomu.jp/works/16818093073309150633/episodes/16818093073317339289

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