魔女の誘い:第一王女ウィンテス
勇者召喚によって勇者の一人として召喚されたケントは、宛がわれた部屋の寝台に側付きの少女を投げ入れた。
花のアロマが漂う闇の中に、
「出されたエサは食い切る主義でね。遠慮はしねえぞ」
ケントが右手で少女の服を掴んで破り捨てる。
しかし裸身が露わになっても少女は悲鳴を上げなかった。
「どうかむぐっ!?」
「エサがしゃべんじゃねえ。いくぜ」
少女の唇を塞ぎ、ケントはそのまま舌で口内を味わい、貪り尽くす。
「悲鳴は好きにしろ。俺は楽しむからよ」
涙を浮かべる少女を
……。
……。
王都の外れには王族のための館があり、今は第一王女であるウィンテスが管理をしている。
広大な敷地には王族用の本館の他に来客用の別館が幾つもあり、色とりどりの花が咲く花園や、遠い国の珍しい魚達が泳ぐ池、剣術や馬術の他魔法の演習に使うための修練場などもあった。
「ほっほっほ。勇者の育成も順調そうで何よりですなウィンテス殿下」
「支援して下さったレジナルド侯爵のお陰です」
歯車の付いたパイプオルガンのような魔道具を使い、ウィンテスとその後見人である【レジナルド・バルバンガス】侯爵の通話は続く。
画質の荒い十六インチの水晶の画面に映る白髪の老侯爵は上機嫌に笑う。
「ほっほっほ。これも我らがトギラ王国のため。ウィンテス殿下が王冠を戴くことこそ、この国の未来にとって最良となる。そのためならば我ら北部貴族は協力を惜しみはしませんぞ」
ウィンテスは頷く。
王国北部は寒冷な気候に加え、魔獣や蛮族の被害が多く貧しい土地が多い。
トギラ王国は元々は北方の小国であり、豊かな土地と凍らない港を求めて南進を続けて来た。
広大な領土を得、遠く海原を臨むことができるようになった今では、王都も政治の中心も南へと移った。
「バルバンガス侯爵家を始め、建国より忠義を尽くされてきた北部貴族を冷遇した父上の政策は間違っておりました。私が玉座に座った時には、是非そのお力を国のために振るっていただきたいと思います」
「ほっほっほ」
北部の貴族の地力は、東・西・南の各貴族に遠く及ばない。はっきりと「歴史だけの貧乏貴族」と
だが自尊心だけは、建国よりの譜代だという歴史への自負だけは厄介なほどに巨大である。
先代も、先々代の王も彼らを政治の要職に就ける事はしなかった。
王国が歴史を重ねるごとに北の血は薄まっていき、既に久しく正室が北から出たことはない。
「お母様の願いは私が果たして見せます」
ウィンテスの母はレジナルドの年の離れた妹だった。
「ほっほっほ。第一王子子飼いの『風雷の魔法使い』と『
「はい。それに『
伝説の傭兵団『
剣士としては細身であり、流麗な容姿と涼やかな
浮遊島に巣くう死霊王討伐の武勇伝は、仲間である仮面の少女『
「あ奴らを倒すには数ではなく、絶対的な力を持つ『個の力』が必要じゃ。そのための勇者、そのための……」
レジナルドが右手を握り、木製のひじ掛けが砕け散る。
「追加の人員を送る」
その言葉にはウィンテスも眉をひそめた。
現在トギラ王国は周辺四か国との戦争状態であり、北部は長年の
政争のために人員を裂き、それでヴォストア王国に敗れれば本末転倒だ。
「心配するな。送るのは現役を引退した元騎士や魔法使い、見習いの見目麗しい者達だ。勇者の調教には有用であろう?」
なるほど、とウィンテスは思い、頷いた。
「頼んだぞ我が姪よ」
「はい
レジナルドの最後の声だけは、荒々しい覇気のこもったものだった。
それを王女でなく、血の繋がった一族の娘としての言葉でウィンテスは受け止める。
レジナルドは頷き、水晶の画面からその姿が消えた。
ウィンテスは魔法使いのローブを纏って仮面でその顔を隠し、部屋を後にした。
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