第23話 レベルアップと新しい力

~ イフリート ~


[ジョンとククルの撃破により大量の経験値を取得しました]

[イフリートの戦級が『十』となりました]


『よっしゃ!』


 スレッドマンの告知を聞いてガッツポーズ!


「どうしたのイフリート?」

『さっきの戦いでパワーアップしたんだ。倒した奴の生命力と魔力を吸収するような感じで俺は強くなれる、みたいだな』

「なるほどソウル・イーターみたいな感じか。だからイフリートって敵の心臓を狙ってたんだね」

『そうかもな。意図してたわけじゃないが、たぶん本能的なものだったんだろう』


 人の、生物の魔力はその心臓から作り出される。

 世界に満ちる自然魔力を取り込む事で、体の中に自身の魔力、生体魔力が生成されるらしい。


 冒険者ギルドで見た錬金術の本に書いてあった情報で、著者は【愚の俗徒 アパレラ・オッチネン】という錬金術師だった。


[戦級が十を超えた為、戦術欄の作成を開始します]


 よし! よし!

 新しいスキル『アームストロング砲』ゲットだぜ!


[成功。戦術欄に『魔導核融合炉(2/5)』を獲得しました]


 あれ?

 なあスレッドマン、アームストロング砲は?


[スキルツリーが異なる為、獲得出来ません。個体名『イフリート』のスキルツリーは『ヒール・レーザー』以降の構成になります]


 そ、そっか……。

 結構楽しみにしていたから、辛みがぴえん。


「わわっ、イフリートの体が薄くなっていく!」


 ペタペタペタペタとカナンの手が俺の体をまさぐる。


 いや~、この人痴漢ちかんよ~。


『大丈夫だ。問題無い』

「そ、そう?」


 咄嗟とっさに口から出たのが死亡級のフラグだったが、マジ問題無い。


『俺はお前の魔法だろ。薄くなる事だってあるさ』

「なるほど。魔力で作った体の維持が難しくなったのか。ごめんね、へっぽこ魔法使いで……」


 肩を落として沈んだ表情を浮かべたカナンの頭を撫でる。

 

『おいおい、お前は最強の魔法である俺を呼び出したんだぞ。最高の魔法使いに決まってるじゃないか』


 カナンって、割とコンプレックスが強いんだよな。


 ククルとの戦いを見る限り、戦士としては間違いなく超一流だろう。

 魔法がショボいというけれど、きちんと発動しているし、魔力量も少ないというわけじゃない。

 

『カナン、使というのは、急いでならないといけない理由があるのか?』


 例えば大切な人が病に侵されており、それを治す為の魔法を修得する必要があるとか。もしくは故郷を占領した魔王を倒す為に必要な魔法を手にする必要があるとか。


 俺の問いに、カナンは小さく首を横に振って答えた。


『成果を急いでもろくな事にはならない。焦りは大切なものを見落してしまうからな。遠回りに見えるかもしれないが、王道を行くのが一番の近道だぞ』

「……団長みたいな事を言うね」


 顔を上げたカナンと目が合った。

 はにかんだ、澄んだ笑みが顔に浮かんでいる。


『お前の行く道は俺が守ってやる。なんせ俺はお前の魔法なんだからな』

「うん!」


 そして何より、お前は俺を助けてくれた。俺に『心』を思い出させてくれた。


―― 『まだ信用してもいい』とは、もう言わない。


 俺を生き返らせてくれた恩は必ず返す。


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