分ければ虹色、混ぜれば真っ黒

うめもも さくら

いつの世も

 性別で服装を決めつけないで!

 守られるお姫様なんてダメ!

 恋愛描写は異性とばかりにならないように!

 この漫画やアニメのこの描写は性別の軽視だ!

 そんなことで笑いを取るなんてヒドイ!

 子供に見せられない!子供が真似する!

 あいつは見るのも不愉快だから出てくるな!

 私は可哀想なんだから助けてもらって当然!

 その言動は不適切!


 最近は、こんな言葉ばかりが行き交っていて息苦しくて生きづらい。

 考え方が古いのだと言われればそれまでだし、昔が良いことばかりだったわけじゃないけれど。


――最近の風潮は気に入らない


 それを正直に口に出して言うと、まるで悪者。

 あっという間に、正義の皮を被ったストレス社会の被害者に袋叩きにされてしまう。


――そんな、この世の中のどこが、みんなが暮らしやすい国なのでしょう?

――こんな、この国のどこに、自由で自分らしく輝ける世界があるのでしょう?


 この風潮のはじまりって、当時の世間で息苦しく生きづらい思いをしてる人を助けるためのものだったでしょう?

 息苦しく生きづらい思いをする人を出さないための運動だったでしょう?

 当時、息苦しく生きづらい人だった人が、当時、世間一般と言われていた人を追いやり、排除するためのものではなかったでしょう?

 ただ、真反対にして、新たに息苦しく生きづらい人を生むためのものではなかったでしょう?

 尊重することや容認することは、無理矢理に強制することや矯正することではないでしょう?

 共生するためのものだったはずでしょう?


――あぁ、とても息苦しくて生きづらい

――あぁ、苦しくてつらい

――この思いを、誰かに賛同してほしくて……

――この思いを持っている人を集めて……

――今の世の中を壊してしまおう


 いつの世も、いつの人間も、また同じことの繰り返し。

 くるくると尾を追う蛇が廻るように、終わらない不毛な正義と不毛な争い。


「いつまで繰り返すのか?それは生きとし生ける人間たちの営みが終わるときかな」


 そう言って、かつて林檎を渡したヘビが舌を出す。

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