アトリビュート
キザなRye
第1話
僕には幼馴染みの女の子がいる。彼女の名は
高校に入ってから僕とさくらはあまり会わなくなった。さくらは朝早く家を出て夜遅く帰ってくるので僕の生活と合わないのだ。さくらに会えないのは少し寂しかった。
僕は自分自身のことをあまり好きではない。自分のことをすぐ否定してしまう。さくらは自分の周りにいる人の中では唯一、僕のことを肯定してくれていた。さくらが肯定してくれるのは他の人が肯定してくれるよりも嬉しかった。
高校に入ってからなんとか生きていけているが、中学校までとは感覚が違っていた。中学校まではもっと楽しかったと思う。
高校3年生の夏休み、図書館に勉強をしに行っていた。開館と同時くらいに僕は図書館に行って勉強を始めた。お昼は図書館で食べられないので一旦外出でてご飯を食べた。
昼食を食べ終えて席に戻ると少し離れた席に見たことがある後ろ姿が見えた。あれはさくらだ。一生懸命勉強しているのが見えたのでさくらに声をかけなかった。
閉館のアナウンスが館内に鳴った。帰るために僕は荷物を片付けていた。片付けながらさくらがいた席の方に目をやると僕と同じく片付けをしていた。帰る方向が同じだから一緒に帰ろう、と思って急いで片付けを終えてさくらのところに行った。
「さくら、久しぶり」
あまり大きくない声で話しかけた。急に話しかけられたのでさくらは声を出して驚いた。
「えっ、
図書館から家までの十数分間は僕にとって至極の時間だった。高校の話とか、最近好きなものの話とか盛り上がった。久しぶりに会ったさくらは一段と大人で、魅力的になっていた。
「さくら、今度一緒に図書館に行って勉強しない?」
僕の持っている思い切りをすべて費やして聞いた。多分、端から見ても一生懸命にやっていることが分かったと思う。
「良いよ」
さくらは僕にニコッとして言った。僕には余裕の笑みのように見えた。
「明日も図書館で勉強する?」
「そのつもりだったけど……」
「じゃあ、明日ね」
彼女にリードされる形でトントン拍子に決まった。
それから毎日のように僕とさくらは一緒に図書館に行って勉強して帰る生活を送るようになった。さくらと話をしている時間はあまり長くないものの、一緒にいられているだけで幸せだった。
「優って高校入ってから好きな人出来た?」
ある日の図書館からの帰りのことだった。この質問に僕はドキッとしてしまった。
「い、いや、出来てないよ」
「ふーん」
さくらはなんだか嬉しそうな顔をしている。
「逆にさくらはどうなの?」
「私は高校入ってからは出来てないよ」
なんだか誇らしそうなさくらの返答だった。さくらは柵から身体を乗り出すかのような勢いでもう一度僕に質問をした。
「今好きな人はいる?」
「まあ、いないことは……」
僕は言葉を詰まらせた。さくらは僕が言葉を詰まらせていることを喜んでいるようにも見えた。
「じゃあ、さくらは?」
僕自身のことから話を逸らそうと話をさくらのことに移した。
「いや、私は……」
急にさくらはモジモジし始めて明言を避ける形で質問に対しての答えから逃げた。少し頬を紅らめているようにも見えた。
「いるんでしょ」
僕は少し笑いながらさくらに聞いた。さくらの顔はさっきよりも紅くなっているような気がする。恥ずかしそうにしてさくらは頷いた。
「その好きな人に告白とかしないの?」
僕が彼女に聞くと恥ずかしそうにしながら
「相手が好きかは分からないし……」
とぼそっと言った。
「優は告白とかしないの?」
「僕のことを好きになるなんてことはないでしょ」
「そんなことないよ。優のカラーがあってそれが好きな人だっているもん」
さくらは少し興奮気味に早口で言った。僕はさくらがどうしてここまで言うのかよく分からなかった。
「そう言うってことは僕のことを好きな人がいるの?」
「いや……えーと……」
単純な疑問で僕は聞いたつもりだったが、彼女はなんだか慌てふためいていた。
「ん?」
「だって私が好きなんだもん」
さくらのその言葉に僕は驚いてしまった。さくらの方を見ると顔全体が真っ赤になっていた。
「さくらの好きな人は僕ってこと?」
「そう!」
バレてしまったことは仕方ないと思ったのか、さくらの言葉はこれまで以上に強かった。
「優の好きな人は誰なの?」
さくらはその勢いのまま、僕に聞いた。これで隠していても仕方がないなと思ったので僕は堂々と
「僕はさくらが好き」
と言った。僕の言葉を聞いたさくらの顔が段々明るくなるのが僕には見えた。
「私たち、両思いだったの?」
さくらは嬉しそうに僕に聞いた。
「そう、らしい、ね」
僕は笑顔でそう答えた。僕の言葉を聞いてさくらが僕に対して今まで見せたことないくらいの満面の笑みで僕の方を見てくれた。
アトリビュート キザなRye @yosukew1616
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