(12)

「ま……待って、あんたが言った事を信用していい根拠は……?」

 僕はすぐに頭に受かんだ疑問を口にした。

「話が逆だ。あたしらは、この世界の『大地母神』とやらが、あたしらにとって危険な存在ではないのか? を調べる為に、この世界に来た」

 そう言いながら、その女は、片手を自分の前に出し……てのひらを上に向け……。

 ごぉ……。

 謎の女のてのひらの上に、小さい小さい小さい竜巻のような空気の渦と……ほんの微かな電光が出現した。

「あいつとあたし……この世界に転移した2人には、その『聖女』サマの言う『異世界の大地母神』から固有能力を与えられてる。ま、あたしらの世界から、この世界に転生した転生者が、この世界の『大地母神』とやらから固有能力を与えられてるみて〜にな。ただし『1人につき1つだけ』を『たった2人だけ』……その代りに超強力なヤツだ。でも、あたしがデモンストレーション代りに見せたコレや……あいつの使う『魔法』みて〜な力は『固有能力』じゃない。あくまで『固有能力』を得る前に、修行やら何やらで得た力だ」

「な……何が……言いたいの?」

「仲間内での、あいつの呼び名は藍婆ラムバー、あたしの呼び名は毘藍婆ヴィランバー。あたしらの世界の『仏教』って云う宗教の一派で崇められてる十柱じゅうにんの闇の女神の内の二柱ふたりの名前だ。藍婆ラムバーは『複数のモノを互いに縛り付ける者』、毘藍婆ヴィランバーは『つながりを断ち切る者』の意味だ。あいつの好きな、中二病っぽい言い方をすれば、ネクサス別離アンチ・ネクサスって所かな」

 その女は、自分が言ってる事を僕達が理解してるかを確認するかのように、僕達1人1人の顔を順番に見ていく。

「もし、この世界の『大地母神』とやらが、あたしらにとって有益な存在なら、あいつが、この世界と、あたしらの世界の間の『通路』を広げる。逆だったら、あたしが、この世界と、あたしらの世界の間の『通路』を完全に断ち切る。通路が広がれば、あたしらの世界由来の転生者は……本人が望むんならだが……元の世界に帰れるようになるし、あたしらの世界の奴らも……制限付きだが、こっちとの行き来が出来るようになる。通路が断ち切られたなら、もう2度と、この世界には、あたしらの世界からの転生者が誕生しなくなる。それが、あたしとあいつに与えられた『固有能力』だ」

 その時……。

?」

 え……?

 聖女様も……こんな表情かおをするんだ……。

 そんなキツめの表情で、聖女様が、そんな質問をした。

「なるほど……判ってるじゃねえか……それとも大地母神サマとやらの入れ知恵か?」

「答えて下さい。何故、か……という言い方ではなく『』としか言わないのですか?」

「無駄話は嫌いか? じゃあ答えよう……。』…………」

 その時、謎の女の顔に……ほんの少しの……いたずらっぽい笑みが受かんだ。

「……は『

 ……えっ?

「あたしが言ってる『あたしら』は、あくまでも、あたしが属する種族……あたしらの世界の言葉で説明するならホモ属ではあっても主流人類ホモ・サピエンスじゃねえ種族の1つだ」

「そ……そんなのが……僕達の世界に居る訳が……」

「居たんだよなぁ……。お前おめえのお友達の白人モドキと同じだ。出来るとしてだが……あたしやあいつや……何なら、その白人モドキどもをブッ殺して頭蓋骨を、よ〜く調べてみろ。肉や皮を被ってるから胡麻化せてるだけで、骨……特に頭蓋骨にはお前おめえみたいな普通の人間サピエンどもとは違う特徴が見付かる筈だ、色々とな」

 ど……どうなってんだよ……?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る