(6)

「だ〜ま〜れ〜ッ‼ お前らなんかに……捕まるか〜ッ‼」

 その時……僕の危機を何度も救ってくれた火事場の馬鹿力が発動した。

 ぶんッ‼

 ぶんッ‼

 ぶんッ‼

 ぶんッ‼

 ぶんッ‼

 ロクな武器が無いけど、とりあえず、手足を無茶苦茶に振り回し……。

 狙うは……ただ1人……あいつだ……。

 あいつの恐怖の支配を打ち砕けば……。

 僕は、あいつに向かって走り……。

「とりあえず、しばらくは、こいつの攻撃を避ける事に専念しろ。こんな感じでな」

 喰らえッ‼ 黙れッ‼

 喰らえッ‼ 黙れッ‼

 喰らえッ‼ 黙れッ‼

 喰らえッ‼……おい、何で、避けられ……。

 でも……一瞬だけ、サイコ女の足が……もつれた。

 ざまあ見ろ。

 女が男に勝てる訳が無いッ‼

 サイコ女は僕の攻撃で派手に吹き飛び……やった、完全勝利だ。

 僕は、拳を高く掲げ……。

「見ろッ‼ 強い奴が指導者リーダーなら、お前らの新しい指導者リーダーは……」

 ん?

 あれ?

 何か変だ。

 全身に痛みが……。

 勝ったと確信して……安心した途端に……体が痛みで……うご……け……な……。

 意識も……飛びそ……たすけ……て……。

「やっぱり、転生者になった時に身体能力を底上げされてたとは言え……元の世界では体を鍛えてもないし……自分の体を効率良く使う為の訓練もしてなかったようだな」

 えっ……? 何で、倒した筈のサイコ女の声が……? えっと……。しまった、倒されたフリぃっ?

「その……の巫女が、転生者どもの中でも能力がイマイチのお前を護衛に選んだのは……単に操り人形にし易い性格だったからか……。でも、人選ミスなのは確かだったようだな」

 な……何を……言ってるんだ?

 今……何の巫女って言った?

「おい、マヌケ……この短時間で、何回、火事場の馬鹿力を出した? しかも、体の限界を超えた力で、その無駄だらけの動き。鍛えてないお前の体が保つ訳ないだろ」

勇者ボルグ様っ‼」

 そ……そんな……。

 白頭巾KKK達は聖女様を拘束済み……。

「あと、私がお前の立場だったら……この状況では、あの女を逃がす事を最優先にするね」

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