(2)
ちくしょう……顔の中でも、白人化薬を浴びた半分は……目は、暗い所でも今まで以上に見えるようになった代りに……肌は極端に日焼けに弱くなりった挙句、目の方も強い光で、目が簡単に眩むようになってしまった。
慌てて、地下の下水道に逆戻り。
多分、地上では日が暮れてるだろう頃になって……。
「大丈夫だか、御主人様……?」
「ああ、何とかね……」
ずん……。
何だ?
どん……。
下水の水面に波紋が……。
どん……ずん……どん……ずん……。
何だ、こりゃ?
「
静かな感じの声だった。
でも……水面と……壁や床がビリビリと震える。
「だ……誰?」
「そ……そんな……偉大なる転生者ナンシュー・サイ・ゴードン様にそっくりな御方が……もう御一人……」
そこに居たのは……端的に言って……デブだった。
だが……良く見ると……背も高い。
そして……。
長ズボンにTシャツに見える格好……と言っても、たまたま、元の世界のそれに似てるだけなんだろうが……。
腕や首は……こ……こいつ……デブじゃない。筋肉達磨だ……。
髪型は半グレ系の人とかが良くやってるようなチョンマゲ風のヤツ。
「そこ
怒ってるような声じゃない。
むしろ、静かな声。
熊のプーさんやパディントンの吹き替えをしても違和感が無いような感じだ。
でも、その声で「殺すぞ」だから、サイコっぽさが逆に半端ない。
「2人とも、下ってッ‼」
「はいッ……」
「はいッ……」
「忠告しとく。下がるだけじゃのうて……そん男から距離
えっ?
ともかく……あっ……しまった。
メイン・ウェポンの大剣は、あの宿屋の娘の死体(多分だけど死んでる筈だ、流石に)に突き刺したままだった……。
でも……相手は武器らしいモノを持っていない。
僕は、サブ・ウェポンの短剣を抜き……。
シュッシュッシュッと「下手に近付くと怪我するぞ」って感じで威嚇……。
どおんッ‼
筋肉達磨が一気に距離を詰める。
そして、僕の腹に張り手。
鎧を着てる筈なのに……腹に無茶苦茶な衝撃。
内臓全体が揺さ振られるような感じだ。
ついでに……嘘だ……かなり距離を取ってた筈の聖女様とスナガのすぐ近くまで移動していた。
しかも、たった一発で膝が……ガクガク……なんて事になってたまるか、ウキャキャキャキャ〜っ。
やった、またしても……火事場の馬鹿力が発動。
「うりゃあああああッ‼」
僕の両手と筋肉達磨の両手が組み合い……そして……動かない……。
あぎゃぎゃぎゃぎゃあああああ〜ッ‼
手が……両手が……潰れるぅ〜‼
「
えっ?
「火事場の馬鹿力
うるさ……えッ?
天井と床が一瞬で引っくり返る。
「体
全身に衝撃を受けて……気を失ないかけた僕の耳に最後に聞こえたのは……。
……イデビ・イデビン・イデビ……。
何だ……この声は?
「ロケ・タケ・タケ・タケ・タケ・トケ・トケ」
女……大人みたいだけど……若い……せいぜい……三〇代前半……。
「ぐわああああッ⁉ な……何じゃ、こりゃあッ⁉」
謎の大男の絶叫……続いて、その絶叫と同じ位の大きさの……大男が倒れ伏す轟音が……下水道を揺らした。
「悪いな……お前の仲間ほど精神操作や洗脳は得意じゃなくてな……。苦痛で言う事を聞かせるしかない。だが、お前のような体育会系の脳筋には有効な手だろ?」
「だ……誰じゃ……
「
どうなってる……何が……起きて……?
「
聖女様の心配そうな声。
「だ……大丈夫……だよ……」
しかし……どうなってるんだ?
僕以外にも転生者が居て……しかも、僕の敵になって……いる……?
「わ……わかんねえだ……一体、どうなっとるだ?」
スナガも混乱しているようだ。
「
……。
…………。
待て、スナガ……お前こそ……何を言ってる?
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