(4)

「え〜ですか、テンノ〜ヘ〜カ様」

 僕の駄目な点を寄せ集めて白人男にしたよ〜な奴は……僕が殺した「白い肌の蛮族」と「有色人種の文明人」が持っていた金品を奪うと、そう言い出した。

「だから、その呼び方やめて」

「では……何とお呼びすれば……?」

「適当でいい、適当で」

「わかりましただ、テンノ〜ヘ〜カ様」

「それ以外で……」

「では、『ボルグ』様はどうでしょうか?」

 そう言い出したのは……ブルカっぽい服に身を包んだ「聖女」。

「えっ? どう云う意味の名前なの?」

「我々『ウルク族』の伝説の英雄の息子です。人間は、この伝説を知らないので名前の意味は判らず、ウルク族が聞けば『伝説の英雄の後継者』の意味だと判る筈です」

「な……なるほど……」

「ああ、そりゃええお考えだ。流石は聖女様、学が有りなさる」

 何か……こいつ、僕を誉める時は明らかに性的興奮状態なのに……この「聖女」を誉める時は……ええっと……義理で誉めてるよ〜な感じがするんだけど……。

「じゃあ、君達は何て呼べばいいの?」

「オラの事は『スナガ』と呼んでくだっせ〜」

 え……えっと……白人にしか見えないのに、日本人の名字みたいな名前だなぁ……。

「では、私は、アシュトとお呼び下さい」

「うん、わかった」

「でだ、ボルグ様、この世界ではオラ達、白い肌のウルク族は人間扱いされてね〜だ。なので、人前でオラ達を人間扱いすると困った事になるだ」

「あ……なるほどね……」

「とりあえず、あの町の近くまで行ったら、オラ達を奴隷として扱ってけんろ」

 そう言ってスナガは遠くの方に見える城壁に囲まれた町を指差す。

「でも、具体的にどうやれば……?」

「じゃ、オラが手本を見せるだ」

 そう言って、スナガは、折角ほどいた縄を再び聖女の手に巻き付けて……。

「ほら、さっさと歩くだ。この卑しい白い雌豚がぁ〜ッ‼」

「ちょ……ちょっと待って、君達にとって、その人は……『聖女』なんじゃ……」

「芝居だ、芝居。ほら、何、人間様の男を見とるだ? どんなにお前が盛りのついた雌豚じゃろ〜と、人間様が豚に欲情される筈が無かろうが〜ッ‼」

「だ……だから、芝居は、もういいよ」

「気になさらないで下さい、ボルグ様。私がウルク族の聖女である事がバレると、私の身に危険が及びます。卑しい奴隷として扱われた方が、私の身は安全なのです」

「は……はぁ、そうですか……」

 何か、納得いかないけど……そういうモノなんだろうか?

 あと、何で、スナガは、あんな嬉々とした様子で「お芝居」をやってるんだろうか?

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