結婚予定のカップルユーチューバー、昔の恋人に再会する…!
yama
第1話 固く鍵を掛けていたはずなのにいとも容易く開いた扉
【登場人物紹介】
笹井七瀬(ななせ)…主人公。24歳。カップルユーチューバーを良太とやっている。高校時代、地味だった自分を変えるため、必死に着飾る。個人チャンネルも持っているが彼氏の方が登録者が多いことに嫉妬している。
河原良太(りょうた)…七瀬の彼氏。カップルユーチューバーとして二年活動していて結婚も控えている。
山口明人(あきと)…高校時代の七瀬の元カレ。七瀬の前から突然姿を消した。
立花楓(かえで)…七瀬の同居人。高校時代からの親友。
_______________________
「ということで僕たち、結婚しまーす!」
ライブ配信中、良太と七瀬が結婚を発表した。チャット欄は祝福のコメントで溢れていた。
『おめでとう!』『お幸せに』『一生推せるカップルユーチューバー』等とコメントで言われていた。
「ということで誓いのキスをしたいと思います」
良太の突然の発言に七瀬は驚く。
「え!?マジ?」
「マジだよ〜。七瀬、愛してる」
そう言って良太は七瀬を抱きしめ、キスをした。
一連の結婚報告配信はネットニュースにもなっていた。
「昨日の配信、記事にまでなってるわよ」
そう報告してきたのは七瀬と同居している高校時代からの親友、立花楓だった。
「もう!ホント大袈裟なんだから」
「登録者数百万人いるカップルユーチューバーが結婚報告したら大騒ぎになるって!でもまさか高校時代あんなに地味だった七瀬が今では登録者数百万人超えのユーチューバーになるなんて。人生何があるか分からないね〜」
「やめてよ。高校時代は黒歴史レベルだから」
「ハハハ。明人の件も吹っ切れたみたいで良かった!」
「明人ね…」
七瀬は良太と付き合ったばかりの頃、高校時代の元カレ、山口明人のことを引きずっていた。卒業前に突然姿を消し、そこから消息不明の元カレ。高校時代クラスの端で一人で漫画を読んでいた、いわゆる地味でオタクな笠井七瀬と付き合っていた元カレ。そんな元カレの存在を引きずっていた七瀬だったが良太と付き合っていくうちに完全に吹っ切れるレベルにまでなった。最初はカップルユーチューバーをやれば伸びるだろうという安直な考えから付き合っていたが付き合っていくうちに徐々に好きになっていった。
七瀬は高校時代、いわゆる陰キャとして過ごしていた。それはそれで楽しかったがその一方でクラスの陽キャたちが眩しかった。「あんなふうに人生を謳歌してみたい!」そう思って始めたのがYouTube。それから七瀬は伸びるために必死に努力した。メイクも勉強して垢抜けるために頑張ったしインスタグラムは何度も撮り直して盛れてる写真しか投稿しなかった。YouTubeで貯めたお金でバレないレベルに整形もした。そこまでして高校時代の自分を変えたかった。今でも彼氏の良太の方が個人チャンネルの登録者が多いことに嫉妬することもあるが昔に比べて大分コンプレックスは減ってきていた。
『今日も良太とデートです!』
と毎回のデートをインスタグラムに投稿する。もちろん写りが良い写真が撮れるまで撮り直して。
「ごめん。写り悪いからもう一枚撮っていい?」
七瀬のそんなお願いを良太は毎回受け入れてくれる優しい彼氏だった。
「もちろん。気が済む写真撮れるまで撮ろうよ。俺たち、インフルエンサーなんだからさ」
「大好き!」
そして一番盛れてる写真を投稿する。コメントには『二人共かわいい!』『本当にいつも癒やされています』『七瀬ちゃん、かわいい』『幸せカップル見るとこっちまで幸せ感じるなぁ』等のコメントに溢れていた。インスタグラムの投稿のコメントを見ることも七瀬の生きがいの一つだ。高校時代、隅っこで暮らしていた七瀬にとってキラキラした世界で自分が認められてる感じがして嬉しかった。
そんな七瀬だったが、転機は突然訪れる。偶然、駅で元カレの明人を見かけてしまったのだ。
………見間違いじゃない。あれは絶対に明人だ………
七瀬は確信を持って声をかけた。
「明人!」
明人は振り返る。七瀬を見ると気まずそうな顔をして一目散に逃げた。
………何で。何で逃げるの?………
明人との偶然の再会。それは七瀬にとっての転機だった。固く鍵を掛けていたはずのパンドラの箱。それはいとも容易く開き始めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます