第41話 結果発表
それから面接は進み28番までが終了。
残りは二人となる。
「さて、最後の29と30番なんだが、彼女らはセットだ。どちらか一人だけ採用というのはなしだ」
「彼女らの性質上、絶対そうなるよね」
「お二人どうぞ」
最後に事務所に入ってきたのは、白バニー黒バニー。
身長の高い(168cm)黒髪ロングがモカ、小柄な(155cm)白髪ロングがバニラ。
二人共スカイバニーというプラチナBODY系列のヒーローチームだったが、事務所が倒産して無所属となった。
大分鎮火したとは言え、炎上による風評被害を今も受けており、帰るべき家を探して野山を彷徨っている野ウサギ。
「ど、どうも~」
「こんにちは」
二人は並んで、結城達の対面のソファーに腰掛ける。
スカイバニーと言う名の通り、彼女たちは腰部ロケットブースターで空を飛ぶ姉妹ヒーロー。
コスチュームは一般のバニーガールと同じデザインと思われるが、二人のフィジカルが高いため胸尻の辺りはかなり際どい。
特に姉のモカに関しては、胸がスーツの上に乗っているようで走ると弾け飛びそうで怖い。
「お久しぶりってほどでもないっすね」
「数週間ぶりってところか。調子はどうだい?」
「相変わらずネットでは、淫乱ウサギだのコバンザメウサギだのボロカス書かれてますね」
「で、でもメタンフラワーを倒してからは、火の勢いはかなり小さくなりました」
「君等の活躍は大体的に報道されたしね。じゃあ早速始めようか」
「「はい」」
「じゃあモカちゃんから行こうか」
モカは肩をビクッとさせると「はいっ」と声を裏返させる。
「あ、あの元スカイバニー所属です……。ヒーローネームはブラックバニー、でも皆モカって呼んでます。ランクはCです。能力はサイキック能力があります。スプーンを曲げたりとか……コントロールがきかなくてねじ切ったりしちゃうこともあります。あと相手の心理状況が見えます」
「なるほど、今皆はどんな色してるのかな?」
モカは結城達を見渡す。
「凜音さんはオレンジ、オーナーさんは白、律さんは水色です」
「テンションの高さに応じて色が明るくなっていく感じかな。怒ると赤、冷めてると青、ニュートラルだと白みたいな」
「はい、ですが悪意を持っていたらオーラがヘビのような、のたうつ黒になったり、淫らな気持ちだとハート型のピンクになったり特別な色や形もあります」
結城はピンクのオーラが放出されないよう、気をつけようと思う。
「一応サイキックも見ていいかな? これはあまり知らない能力だ」
「は、はい。うまくいくかな……」
結城はスプーンを彼女の前に差し出す。
「これを曲げられるかな? 折ってもいいよ」
「はい」
モカは目を閉じ念を込めると、なぜかスプーンではなく結城の右親指がピクピクと動く。
モカが「は!」っと目を開き力を送り込むと、彼の親指がパキっという音と共に変な方向に曲がった。
「あぁぁーっ! 折ってもいいっていったけど、俺の指は折っちゃダメぇぇ!!」
「す、すみませんコントロールが! 戻します!」
モカが再び念を込めると、今度は結城の左親指が変な方向を向く。
「あぁぁっ!! 指がぁぁぁ! 拷問だああああ!!」
「あわわわわわわ」
モカが能力失敗でパニックになると、事務所の調度品がサイキックパワーで浮かび上がる。
「お姉ちゃん能力切って! 暴走してるよ!」
バニラがなんとかなだめるとサイキックパワーはおさまり、調度品も元の位置に戻る。
「すみませんすみませんすみませんすみません」
モカはテーブルに頭を打ち付けるくらい深く謝罪する。
「だ、大丈夫だよ。能力はもういいとして、じゃあ長所短所は?」
「長所は……わかりません。短所はその……内気なところです。あと能力の使い方が下手で……」
「じゃあ事務所に望むことは?」
「あの……命令をしていただけた方が動きやすいかしれません。我々空を飛べるんですけど、飛んでるだけになってることが多くて」
その話を聞いて凜音が頷く。
「確かに、状況が見えても犯人を捕まえるにはどう動けばいいかわからないよね」
「はい……」
プラチナBODYはタレント業をメインにしている事務所だったので、それが急にヒーロー業メインになり、指揮してくれる人もいないとなるとうまくいかないだろう。
結城はじゃあと今度はバニラを視線で促す。
「同じく元スカイバニー所属で、ランクはCです。ヒーローネームはホワイトバニー、皆バニラって呼びますけどね。能力はラビットジャンプ。ブースターなしで、50メートルくらい跳べます」
「なるほど、ブースターが壊れても継戦能力があるということだね」
「長所はお姉ちゃんが口下手なので、かわりによく喋るようになりました。短所は素早く動けるんですけど、攻撃火力が低いことですね。後お姉ちゃんが言い忘れてますけど、我々姉妹間でテレパシーみたいなのが使えます」
「君にも多少サイキック能力があるってことかな?」
「ですね。ウチには、スプーン捻じ曲げるとかそんな能力はありませんけど」
「今テレパシーで会話できる?」
「可能ですよ」
「じゃあ二人で俺の感想話して、同時に言ってみてくれる?」
二人は顔を見合わせて頷く。
「「せーの、おっぱい見てる」」
凜音と律の目がすっと鋭くなり、結城の足を両サイドで踏む。
「しょうがないんだってこれは! こんな胸元あいた格好をしている女性の胸を見ない男なんて信用しないよ!」
凜音と律は、結城の革靴を踏む力を強くしていく。
「ヒールで踏むのやめてマジで! わかったわかった! 面接は終わり! 一階のカフェにどうぞ!」
それから3人は面接結果を協議し、カフェへと下りた。
そこには面接した30人のヒーローが全員残っており、結果を待ちわびている。
両手の親指に包帯を巻いた結城は、ヒーローたち全員を見渡す。
緊張しているもの、採用を確信しているもの、失敗して落ち込んでいるもの様々である。
一部を除き皆弱小でも良いから、事務所のバックアップを受けたいと望むヒーローたち。
内心全員採用してあげたい気持ちはあるものの、事務所経営の観点からそうもいかない。
期待や不安、願いに満ちたヒーローは静まり返る。
「えーそれでは結果発表をします。番号若い順から……11番デネブ、12番アルタイル、13番ベガ、14番グレース、29番モカ、30番バニラ」
合計6人の大量採用。
矢車とグレースからのアドバイスを受け、アクセル事務所出血覚悟の大改革。
「「「「イェアー!!」」」」
「お姉ちゃん受かった!」
「う、うん。オーナーさんの指折っちゃったのに……」
グレース達カウガールは全身で喜びを爆発させ、バニー達は軽く放心している。
凜音と律は、その様子をウンウンと眺める。
「予定調和といえば予定調和ですけどね。順当に強いヒーロー選びましたし」
「まぁアクセル2期生は結構力ありそうじゃない?」
「パパが最後までティッシュマンとるか悩んでた時は、どうしようかと思いましたけどね」
「ティッシュ便利だろう。トイレで紙切れた時、彼が助けに来たらメシアだと思うぞ」
「変な能力好きなんだから」
「それよりパパ、本当にこれだけ雇って大丈夫なんですか? 雇ったのはいいけど来月潰れたとか洒落になりませんよ」
「計画倒産疑われるわね」
「アルファオービットから武装支援を受けたから、彼女たちの人件費だけでいける。まぁグレースの移籍金とか全部無視した話だが」
結城は
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