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  • 届く旋律。果たす約束への応援コメント


    音楽小説を読み漁る習性があるもので、タイトルに惹かれて拝読しました。

    先に二箇所ほど、校正ミスかなと思えるところがあったのでご報告します。

    >だからこそ、認識が変わる負から正へ変わったのは当然と言えよう。
    三文節目の「変わる」は不要な語かと思います。おそらく修正時の消し忘れかと。

    >呼吸を整えた青年は木戸に手をかけ、開けようとしたが、
    ここは「青年」ではなく、「女性」かと。

    一般的な読者だと触れないでいる誤字の類を、いちいちコメントしてしまうのが習いになってます。この種の指摘は不要とのことでしたら、一言いただければ以後はコメントに入れませんので、おっしゃってください。


    全体的にそこはかとなく純文のスタイルが感じられる作品ですが、内容的にはファンタジーだと思いますので、一応そちらの流儀に照らしつつ、感想を書きます。
    総じて柔らかい雰囲気の、音楽を通しての人と人との絆を叙情的に描いた、サイズ的にはまさにこの分量にジャストフィットした掌編ですね。会話の中で、時間を早回ししているような男の描写と、それを見守る女のシーンなどは、やや謎めいてはいますが、「離れていた二人の時が、今一致した」ということの象徴と見ると、なかなかにいい感じの幻想表現になっていると思います。
    さて、本作は終盤で物語のだいたいの謎が明かされ、ストーリーが一種のジェントルゴースト(ただし、ゴーストがゴーストと再会するという形の)であることが判るのですが、そのタイプの話として感傷に浸るには、やや物足りなさを感じました。
    理由をひとことで申し上げると、「終盤であれもこれも説明しすぎている」からではないかと。女性の正体とか、松笠氏が愛妻家であったこととか、本人がピアノを弾くようになったそもそもの経緯とか、ですね。
    あと、これは横道のコメントですが、女性が坂道をつらそうに登っていたなどの描写もやや疑問です。あるいは、生身の人間である親類の誰か、というミスリードを狙ったのかも知れませんが、最初から人間離れした描写でも何ら問題ないと思います。呼吸もしないし体重もないような、不思議と若々しい初老の女性、みたいな。
    情景の作り方等は重めの幻想文学っぽいスタイルをとるとしても、ドラマの構造は、こういうタイプのストーリーである限りは、情報を小出しにして、読者にあれこれ想像させながら(みえみえの展開でもいいので)最後に「ああ、やっぱり」と思わせる、短編ミステリーか恋愛ドラマの手法を援用する形でよろしいのではないでしょうか。

    独特の文体をお持ちの方に、いささか不躾なコメントかと思いましたが、鍋谷様の創作のスタイルをお尋ねする意図も込めて、暑苦しい感想を送らせていただきました。この手の、作品のネガティブ面の感想にはあまり触れてほしくはない、ということでしたら、以後は控えますので、忌憚なくおっしゃってください。長文、お許しの程を。

    それにしても、死後に二人並んで「愛の夢第三番」を連弾するなんて、そこだけ見ると、究極のメロドラマという感じがしますね……。

    作者からの返信

    お読みいただきありがとうございました。

    また、文章に関する丁寧な指摘もありがとうございます。

    指摘の方はされるだけで嬉しいので、ご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いします。

    自分の創作スタイルとしては、渦を巻くように、なるべく遠回りをして作品の核心に辿り着けるように心掛けています。

    この意図としましては、私の思考が捻くれているためです。個人的に一読するだけで、作品の根底にある思想に辿り着けるような作品は「王道すぎる」と思ってしまい、私の曲がった性根を満足させてくれません。

    そこで、非常に安逸な考えでありますが、できるだけ核心から遠い場所から作品を作り、読み込み、考えて行くことでようやく作品の核心に辿り着けるような創作を心掛けています。

    結びになりますが、お読みくださり本当にありがとうございました。これからも精進していきますので、ご指導ご鞭撻のほど今後ともによろしくお願いします。

    また、長文の返信となり申し訳ありません。