転生球児の冒険録
浜こーすけ
転生球児の誕生
①
160キロを超える剛速球。七色の変化球に、針の穴を通すような制球力。抜群の守備力に、場外へ飛ばすほどの圧倒的パワー。それらの能力を有し、日本の野球界において至宝と言われた逸材がいた。
彼の名前は、
「ストライク!バッターアウト!!」
投げては三振の山を築く。
「真、ナイスピッチ!」
「次の打席はお前からだよな?絶対勝つぞ、この試合!」
予選の決勝、勝てば甲子園へ出場する夢が叶うことになる。仲間からの言葉に軽く頷き、彼はバッターボックスへと向かった。
(必ず…必ず勝つ)
心は熱いが、見た目は冷静。その内に秘めたる闘志を宿しながら、真は軽く息を吐いた。左手をポケットに入れて拳を強く握りしめ、深呼吸しまた息を吐く。その風格は、王者の貫禄さえ感じる。何千何万と戦ってきた戦士のごとき佇まいだ。彼のオーラに圧倒されているのか、相手ピッチャーの表情は動揺が隠しきれておらず、暑さと緊張の汗が混じりながら、大きく振りかぶった。
指先はおろか体全体が力み、小刻みに震えている。そしてその余計な力は、思わぬ方向へと進んでしまい、リリースされた白球は相手キャッチャーのミットから大きく外れた。
「ガンッ!!!!!!」
球場に鳴り響く大きな音に、そこにいた全員が一瞬静まり返った。打席に立つ真のヘルメットに、ピッチャーが投げたボールが当たった音だ。頭部へのデッドボールによりヘルメットは割れ、返事をすることなく彼はその場に倒れてしまった。
「おい君、大丈夫か!?しっかりしろ!」
審判が駆け寄るも、真の反応はない。
(やば、意識が…俺は、俺は……)
チームメイト、監督、相手チーム、審判団、観客―――最後まで全ての者が彼に声をかけたが、かすかに聞こえるその声に、その青年は終始応答することはなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます