第42話 ありえるから言ったんだよ?
「その話詳しく――」
「目的地に到着~! ささ、入った入った!」
刹那、お目当ての店舗に着いたようで話を遮るように水瀬は俺を店の中へと押し込む。
何やら慌てた様子だったが、話したくない内容なのだろうか。
聞き出したいのは山々だが、最優先事項は加奈へのプレゼントを選ぶことだ。
水瀬にはあとからでも問い詰めれば答えてくれるだろう。
なにせ俺は弱みを握っているからな。
「おー、ホントに加奈の好きそうなものがいっぱいだ」
カラフルでポップな店内には、可愛い服や雑貨が溢れていた。
「どう? これなら見つかりそうでしょ?」
「時間はかかると思うけど、全力で見つけ出すよ」
全ては加奈を喜ばせるため、そのためなら俺はなんだってする。
どれだけプレゼント選びに難航しても、絶対に見つけ出してやる。
「服は後から見るとして……ネックレスから選ぼうかな」
「おぉ、もしかして両方プレゼントするつもりなの?」
「相性が良かったらな。服選びとかなら得意分野だし」
「加奈に似合うのがあるといいねぇ~」
自信ありげに答える俺であったが、俺が得意なのはメンズコーデであってレディースではない。
むしろ全く知識などない。
ネックレスなんかは特に分からない。加奈に似合いそうなのを選ぶのだが、それがセンスがいいのか悪いのかは女子視点と男子視点では違うからな。
ファッションは共通する部分があるからいいが、小物系は特に難しい。
「女子のネックレスを選ぶ時に重要なことを一つ言っておくと、ハートとか星とかはやめておいた方がいいね」
リングやネックレス、ブレスレットなどが置いてあるコーナーに移動すると、水瀬はピンと人差し指を立てる。
「ハートとか、そんなダサいの選ぶわけ――」
「壮馬くんならあり得るから言ったんだよ?」
「流石にそこまで……」
「どうせ、指輪とかプレゼントするってなると、オシャレで付けるものじゃなくて、こうゆうジュエリーが付いたやつ渡そうとしてたんでしょ?」
指さす先には、エメラルドを模した鉱石がついている指輪。
「はい……」
俺が最初に考えていたものと全く同じでグーの音も出ない。
だってプレゼントで指輪なんて言ったら、特別感があるものがいいじゃないか。
ファッションで付けるようなリングを渡しても、俺が納得いかない。
「ほら、だから一応言ってあげたんだよ」
「ご教授どうも……」
小バカにするような笑みを浮かべる水瀬に、反論の余地がない俺はぎゅっと拳を握る。
……今日の夜から女子のファッションを勉強しよう。
プレゼントを選ぶ時に誰にもアドバイスを貰わなくもいいくらいの知識を付けやる。
水瀬に嘲笑れるのが悔しくてたまらない……普段はお邪魔無視でしかないのによ!
こういう時にだけマウント取りやがって!
学校の奴らにこの姿を見せてやりたいよ!
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