第40話 メリハリがある

「私服は点数高いね。ちゃんとオシャレ」


「会って第一声がそれかよ」


 翌日のお昼頃、駅前で合流した俺と水瀬。


「デートの時はオシャレで当然だけど、こうゆう時もオシャレできてるのはいいね!」


「俺のこと舐めてるのか?」


「まぁ~、プレゼントにぬいぐるみとかあげようとしてるくらいの人だからね~」


「それは何も言い返せないわ」


 自分の服とそれとは関係ないだろ。俺は好きな服を着てるだけで、これは自分の趣味でもある。

 誰かのことを考えているものではない。

 多少は相手の服の系統と合わせることはあるが、そこまでは気にしない。


「普段からオシャレなのはいいことだよ? 見られてるって自覚があるってことだから」


「貶したと思ったら、褒めてくるのはなんだ?」


「モチベーションアップ?」


「……ウザ」


 なんで会った瞬間からイライラしなきゃならないんだ。いちいち勘に障ることを言ってくるから尚更ムカつく。


「さてと、行こっか」


 顔をしかめる俺を気にも留めず、水瀬は歩き始めた。


 どこに行くことすら知らされていないので、ただその後ろを付いていく。

 電車で数駅、その間水瀬に色々とイジられると思ったのだが、特に会話もなく2人してスマホをいじっているだけであった。

 揺られること十数分、アクセサリーショップや古着屋などが溢れる街にやってきた。


「ここに来れば、大抵なものはあるからね」


 改札をくぐり、駅の看板下で仁王立ちをする水瀬。


「あんま降りたことないな。前に友達と服を買いに来た以来だ」


「よし! どうゆうものが欲しいか言ってくれたら案内するよ!」


「俺はそこから聞こうとしてたんだけど今日」


 お店の案内の前に、プレゼントする物の系統から決めてもらわなきゃ話が進まない。

 ぬいぐるみはいいとして、指輪がダメとなると本当に何にしたらいいか頭が真っ白だ。


「プレゼントで定番なのは、ネックレスとか香水とかかな? 残らないものは記念にならないし」


「ネックレスいいな」


「あとは、ブレスレットだったり財布とか小物入れ?」


「財布とかもいいな。それなら服とかも?」


「相手の好みによるけど、そこは私がいるから安心して聞いてね」


「めっちゃ助かるわ」


 なんだかんだ頼もしいんだよな。しっかりしている所とダメな所とのメリハリがある。


「それじゃ、加奈の趣味に合ってる服と雑貨と小物が置いてある店に連れてって貰おうかな」


「了解! この前加奈が気に入ってる場所があるからそこなら色々見れると思うよ~」


「仲がいい姉妹なことで」


 加奈が一度行って気に入ってるなら、何かしらビビッと来るものがありそうだ。

 何点か自分で選んでから更に水瀬に絞ってもらって、最終的に俺が決める。

 完璧な流れだ。


 あとは誰にも見つからないことを祈るだけ。

 今日、加奈には秘密にしないので水瀬と買いに行くことを言っていない。

 偶然すれ違っても誤解されそうなので、五月雨にカラオケに閉じ込めてもらっている。


 もし学校の人に会っても、加奈のプレゼントを買いに来たと言えば納得してくれるだろうからそこまで心配はいらない。

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