第39話 一緒に買いに行ってあげるって言っても?
『やっぱ無駄だったわ。他の人頼るからじゃぁな』
呆れた俺は電話を切ろうとするが、
『ちょ! 冗談じゃん~! 許してよぉ~』
慌てた様子で謝ってくる水瀬。
『大丈夫だ。もうお前に用はない』
『本当に加奈の身内から有益な情報聞かなくていいの?』
『どうせ茶化教えないだろ』
『私が一緒に買いに行ってあげるって言っても?』
『……ほう』
興味深い提案をしてきた水瀬に、俺も改まって聞き入る。
水瀬と加奈のプレゼントを買いに行く……か。
確かに、名案かもしれない。
一人で買いに行ってどれにしようと悩んだ結果、変なものを選んでも嫌だし。
直接意見を貰えた方が助かる。
それに、一緒に行くなら水瀬が変なことをしようとしてもその場で怒鳴れるし安心だ。
電話だけでは聞けないこともあるだろうし、一緒に行くのはいいかもしれない。
『アドバイスはするけど、最終的には自分で決めてもらうよ?』
『それでも助かるよ。あそこまでセンスをボロクソ言われるともう一人でなんか買いにいけないんからな』
『でも、私次第で壮馬くんが加奈にどう思われるか決まっちゃうってことだね』
『センスが悪くても、微妙に俺が分からないくらいのものを進めてきたら殺すからな』
『ははぁ~しないしないよぉ~』
棒読みの水瀬に、俺は舌打ちをする。
本当に信用してもいいのだろうか。水瀬に頼んだことに不安が残る。
まぁでも、いくら茶化してきたと言っても、最終的にはちゃんとしたものを一緒に選んでくれるだろう。
こんなにウザく思うのが途中経過だけだ。
『ま、お願いするよ。加奈に喜んでもらいたいし』
改めてお願いすると、
『もちろん! お姉ちゃんにお任せしてね!』
『俺の姉がこんなんだったら嫌だわ……』
自分にもし姉が居たとして、こんな面倒くさい性格だったらとっくに縁を切っていることだ。
『来週までには用意しておきたいんだよな』
記念日は来週の木曜。学校があるため、放課後にデートをした後プレゼントを渡そうと思っている。
デートは少し高めのレストランにでもしようと思っているが、流石にセンスがないなんてことはないだろう。
『じゃ、早めに買っておいた方がよさそうだね』
『できれば早めの方がいいかもな』
『なら、明日駅に12時集合ね!』
『え明日――』
そう言いかける頃には、電話は既に切れていた。
……なんでもかんでも唐突な女だな水瀬は。
幸い明日予定が空いていたからいいものの、俺が暇じゃなかったらどうしてたつもりなんだよ。
暇人だからいつでも空いてるでしょ? と言われているみたいでなんかムカつく。
「ちゃんとアドバイスくれるのか? あいつ」
不安だが、連れていかないよりかはマシだ。本当にいいものを選んでくれたら、ご飯くらいは奢ってあげるとしよう。
調子に乗ってそのまま、加菜のことを色々聞けるかもだし。
全ては、明日になれば分かることだ。
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