第37話 確かな笑顔

「何を心配してたの?」


 加奈は俺の言葉を聞いて、ひょこっと囲まれている人の中から顔を出す。


「いや、てっきり俺は別れろとか色々言われるかと」


「えぇそんなこと考えてたの?」


「だって怖いだろ、写真拡散されてるとか聞かされてたから」


「まぁあれは……ちょっと怖いよね」


「加奈みたいな人気者と俺なんて……釣り合わないとか言われそうでな」


 正直に思っていたことを話す。

 誰しもが一度くらい学校の可愛い人気者と付き合いたいという願望を持っているはずだ。


 けれど、そこには覚悟も必要になってくる。

 付き合えたとしても、自分と釣り合っているのかという疑問に耐える覚悟と、周囲の反応に耐える覚悟。


 俺は前者に関しては大丈夫であったが、後者の方が圧倒的に心配だった。

 でも後者を気にすれば気にする程、自分と釣り合いが取れているかと疑心暗鬼になるものだ。


 そこに至るまでに解決して本当によかった。


「好きな人とか恋人に釣り合うとか関係なくない? 当人同士が幸せならそれでいいじゃん。私たちが口を挟む権利なんてないんだから」


 ハァっと呆れた様子で言う美玖。


「それとも、私たちがそんな事言うとでも思ってたわけ?」


「まぁ多少はな」


「フフっ……正直でよろしい! まぁ怖いわな。私だって加菜と付き合ってるのバレたら周りの反応めちゃくちゃ怖いもん」


 何この友達に絶対に一人は居て欲しい頼もしい人物は!


「美玖ちゃん……ありがと」


「いいえ。壮馬と幸せにね」


「……うん」


 コクリと加菜が頷くと、どっと歓声が沸き上がる。

「おめでとう」とか「幸せになれ~」など、どれも暖かい言葉ばかりだ。

 俺もどこからか噂を聞きつけた男友達に肩を組まれ、


「羨ましいぜコノヤロー」


 と、笑顔で言われる。

 便乗して知らない男子からも「どうゆう世界線で生きてたら加菜と付き合えるんだよ!」「浮気とかしたら俺が代表してアレをちょん切るからな!」などと妬みなしに羨ましがられていた。


 温かい場の空気に囲まれて俺は思う。心配し過ぎだったのかもしれな……と。

 加奈の周りに悪い人なんていないんだ。

 それに、加菜は何かしたとして悪く言われる人物ではない。


 人気者というのは自分の存在があってこそだが、周りの人がいないと成り立たないものだ。

 加菜の可愛さ、人柄。そこに加えて友人も入ってくる。


 それに、こんなにいい人たちに囲まれていないと学校生活を謳歌なんてしていないだろう。


「ちょ、ちょっと~……こんなに盛大に祝われると恥ずかしいんだけど~」


 顔を赤く染め、お祝いムードのみんなを止めようとする加菜。

 嫌がる様子など全くなく、確かに笑顔に満ち溢れていた。



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