第36話 友達と祝福
「おいおいどうゆう状況だよ!」
教室に入るや否や、俺達に視線が集まりガヤガヤと騒がれる。そんなことよりも手を引っ張られながらも加奈に問う。
俺がこの場に居ても更なる問題を増やすだけだ。
混乱にならざる負えない。
されるがままの俺は、そのまま先程まで座っていた加奈の席へと座らされる。
周りの視線が痛い中、
「もう聞いてるけど、付き合ってるんだって?」
よく加奈と一緒にいる友達の西野美玖(にしのみく)から高圧的にそう聞かれる。
既に問い詰められて口を割らされてるのか。
そっと後ろにいる加奈に視線を送ると、静かにコクリと頷く。
バレてしまった以上は隠すこともない。もう周りの目なんてどうでもいい。
好きな人と付き合って何が悪いんだ。
誰が何を言おうと俺は加奈が好きで、加奈は俺を好きなんだ。
その気持ちに指図などされたくない。
頭の中で話すことを考えながら「そうだけど、何か?」と強気に出る俺。
これで2人からの証言は整った。あとは事が収まるのを耐えるだけ。
「マジでおめでと過ぎるんですけど~‼ 遂に加奈にも春が来たよ~‼」
「へ?」
高圧的な態度とは一変、加奈に抱き付き祝福をしてくる美玖。
「やっぱりあの写真デートだったんじゃん~! 青春してて羨ましすぎるんですけど~!」
「仁和寺くんと最近異様に仲がいいと思ったんだよ私」
「しかもナンパから助けたんだって? 仁和寺くん男気あるじゃん~」
そこに乗っかり、周りを囲んでいた女子も一気に祝福をしてくる。
何がどうゆうことだ。
付き合っていることを非難されるのではなく、完璧にお祝いされてるぞ?
俺の予想と全く違った。今回は確実だと思っていたのに、外れた。もちろん外れてよかったと心底思うが……ここまで祝福されるのは想定外だ。
「加奈? お前どこまで話してるんだ?」
気になったのはそこだ。
この調子だと、馴れ初めから今までのことを全部話している気がしてくる。
まさか下着姿で告白してきたことも……
「ナンパから助けてもらって、お礼がてらにご飯に行って私から告白したって言っちゃった」
流石に、誤魔化していたようだ。
照れながら話す加奈に、
「加奈もやるときはやるんじゃ~ん! 仁和寺くんも告白されるなんてすごいじゃん」
と、美玖は頭を撫でる。
「よ、よかったぁ~」
周囲を見ても、誰も嫌悪の目を向けていない。あちらこちらから歓喜の声が上がるのを聞いて、俺は安堵のため息を吐いた。
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