第32話 意味深な言葉
「……」
流石に怒りすぎたか。
この写真を見るに、付いてきたこと自体悪意であるとは思えない。
水瀬はおちょくって来るとは思うが、後々現像した写真を渡してきて「幸せそうだね」と微笑みながら言ってきそうだ。
そんなような気がする。
五月雨も、「こんな男に取られて悔しい」と唇を噛みしめるだろうが、加菜のことを考えでなんだかんだで祝福してくれるだろう。
感情的になってはダメだな。
もっと物事の本質を見ないと。
「ごめん、言い過ぎた。撮った写真全部送ってくれ」
頭に手を置きながら、俺は2人に謝罪する。
「ううん、私たちこそごめんね。勝手について来ちゃったりして」
「その代わり、今日の写真は一枚も忘れず寄こせよ」
「そのつもりではいるから安心して?」
「お前のことだ。一枚か二枚が隠し持ちそうだんだよ」
「あ、バレた?」
「んなことしたら社会的に殺す。弱み握られてるの分かってるよな?」
「はいすみません」
水瀬を従わせるのは至って簡単。素の姿を学校にバラすと言えばコロっと言うことを聞く。
「私もごめんなさい。次からはバレないように――」
「違うだろクソガキ」
「……反省してます」
この生意気な後輩は、少し威嚇をすればすぐにしゅんと肩を縮める。まぁ俺より加菜に言ってもらった方がちゃんと聞きそうなので後で躾をしてもらうとするか。
「一件落着ってことでここで解散しよ」
パチンと加菜は手を叩くと、場の雰囲気を変えようと明るい声で言う。
「そうだな。今日はここまでにしておこう」
俺も楽しみにここへ来たんだ。喧嘩してても気分も時間も台無しにするだけだ。
「私たちはもう外に出るよ。2人はもうちょっと楽しんでから帰りな」
「この度はご迷惑をおかけしました……」
「ほら、五月雨行くよ」
「は、はい!」
水瀬も、今日はいつもみたいにしつこく絡むのではなく身を引くのも潔かった。
妹を困らせたりはするものの、ちゃんとその妹のことを考えて行動するあたり、本当にいい姉だと思う。
たまに、お前はバカかとツッコみたくはなるが、今日のうちは触れないでおこう。
「お姉ちゃん、後でね~! 五月雨ちゃんもまた学校で~!」
2人の後ろ姿に、手をする加菜。
その声を聞いた水瀬は半身振り返ると、
「加菜が今日帰るのは家じゃないから、また明日ね~」
意味深な言葉を残して人混みへと消えていった。
「家じゃないってどうゆうこと?」
「分からないけど、まーた嫌な予感がしてきたぞ」
残った俺たちは、水瀬の言葉に不信感を覚える。
水瀬の奴、次は何を俺たちに仕掛けたんだ。
またろくでもないことをしているのなら、次こそは許さない。
加菜と一緒にどうにかしてボコる。
はぁ……本格的にマズいぞ。だって俺の予感は当たるんだ……
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