第31話 余計なお世話

「じゃぁ、今日の出来事全部見られてたってこと⁉」


 俺達のやり取りを静かに横で聞いていた加菜は、ハッとして声を荒げる。


「まぁ、見てないって言ったら嘘になるよね」


「……っ!」


「いやぁ、私には見せてくれない顔してて、お姉ちゃんなんか感動しちゃったよ」


「感動するな!」


 全てを行動を見られていたことに、加奈の顔は一気に真っ赤になる。


「顔なんてよく見えるな。距離は取られてたはずなのに」


「双眼鏡と、五月雨ちゃんが一眼レフカメラを持ってきてくれたから、加菜の可愛い表情も壮馬くんのデレデレなところも綺麗に収めてあるよ」


「「消せ!」」


 加菜と俺の声が重なる。


 五月雨も水瀬と止めようとしたとか言っていたが、ノリノリで道具持参してるじゃないか!

 しかも一眼レフってカメラマンかよ!


「お姉ちゃんのバカバカバカ! なんで全部見てるの! 恥ずかしいことしちゃってるかもなのに! 五月雨ちゃんもバカ!」


 あまりの恥ずかしさに耐えきれなくなった加菜は水瀬の肩をポコポコと叩く。

 俺も恥ずかしくて死にそうだ。

 よりによって一番見せたくない2人にイチャイチャを見られてしまったんだからな。


「はぁ……もう死にたい」


「大丈夫です! 全部可愛かったので!」


 赤面した顔を両手で覆う加奈に、サムズアップをしてフォローをする五月雨だが、


「そうゆう問題じゃない!」


 ただの死体撃ちに、さらに加奈は羞恥に顔を染める。

 この2人のせいで楽しかったデーとが一変して辱めを受ける会に代わってしまった。


「おい、どうオトシマエつけてくれるんだ? ……お前ら」


 あのまま静かにつけていて、後から発覚したなら後日談としてまだ笑い話で終わらせられたが、バレてしまった以上、なにか責任を取ってもらいたい。

 鋭い目に何か察したか、


「よく考えてよ。私達カメラマンしてたんだよ? 写真もすごくよく撮れてるし」


 と、弁解を始める。


「あ、ベストショット見たらついて来られてよかったな~って思うかも!」


「うんうん」


 自分を悪物にしないように必死な水瀬と、横でただ頷くだけの五月雨。


「……俺、写真を撮ってなんて頼んでないよな?」


「頼まれてなくてもさ、妹の楽しそうな姿を写真に収めるのが姉としての役目かなって」


「そうゆうのなんて言うか知ってるか?」


「妹思いの優しい姉?」


「余計なお世話だってことだよ!」


 もうそろそろ認めた方がいいぞ。誤ってもらわないと俺もブチ切れそうになってくる。

 拳を強く握って怒りを抑える俺に、


「ねぇ、あれ見て」


 ちょんちょんと俺の服を引っ張る。


「加奈も言ってやれ。姉妹なんだから強く言えるだろ?」


「いや……あの写真」


 ジーっと見つめる先には、水瀬が持っている一眼レフの画面。

 そこに映るのは、自分たちでも知らない仲睦まじく楽しそうな表情をしている俺達が写っていた。

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