第一楽章 Andante Sostenuto

どのぐらい乗り過ごしたかよくわからないが、私たちは様々な遺跡を通り抜けた。いずれかが目立っているものもある。例なら、今通りかかっている、巨大な壁が構成した環状な建物(かつて)。竣工した以来千年以上も過ぎたが、地球人の誰でもあの建物を一目でわかる。けれども、私たちの目的地はここではないようだ。私はテレーゼに従って続けている。すぐ、私たちはある空き地に着いた。ここは先言ったあの建物より有名ではないが、イタリア人として、私はまだ見てすぐわかった。

「トッレ・アルジェンティーナ広場か、どうしてここに来ましたの?」

テレーゼは何も言わずに、遺跡の真ん中に行った後、両腕を広げて、ゆっくり高く上げた。いつの間に霧が彼女の後ろと両手の周りに集まった。両手の霧は別々にヴァイオリンと弓になって、後ろの霧は何もないところにかなり人数が多いオーケストラに変わった。フレンチホルンやチェロや、透明な奏者たちが透明な楽器を持っている。

床に座って、私は前回の経験を取って、演奏を楽しみに準備できたのに、奏者たちは誰かを待っているように全く動かない。少し後、遠いところから馬のなき声が聞こえた。馬車が私の後ろから遠くない場所に停まった。馬車から、男が降りた。彼は杖をついて、ぽっちゃりした体をして、私のそばの地べたに座り込んだ。

男とお互いの視線が合ったあの瞬間、私は息を呑んだ。

「ジョアキーノ・ロッシニ⁈」私は口を開けていて、心の中に声を限りに叫んでいた。

「こんなのはレディっぽいではないよ~」彼がそう言って、私はこれでやっと我に返って口を閉じた

彼は興味深いに私をじろじろ見ていて、

「小娘、大丈夫かな?」

「え、あ、私?えぇっ、元気ですけど。」

「え?」

「え?」

ロッシーニさんは何かを気づいたようにおでこを叩いた。

「そこの首席さんよ、あんたはまさか何も彼女に教えないかい?」彼は片手を腰に当てて第一ヴァイオリンの首席奏者のテレーゼに問いかけた。

「あっ、忘れた。」

「...はい?」

「エリーゼは指揮になるため、ここにいる。」

「...はいぃぃぃぃぃ?」

いやいやいや、私は指揮する経験一度もないし、今どの曲を演奏するつもりさえも知ら...

ロッシーニ、アルジェンティーナ劇場か。

「...《セビリアの理髪師》か...」さっきテレーゼが造ったオーケストラの中にも声楽家がいないので、「序曲だけでしょう。」

「...やはりこの時代もこの名前か、この序曲。」

ロッシーニのような多作家にとって、オペラの作ることは一か月ぐらいのもので、《セビリアの理髪師》は二週間さえ使わない。しかし、このオペラが初演された日は全く惨事だ。ロッシーニは公演する数日前に序曲がまだ書かないのをやっと覚えて、前に書いた別のオペラの序曲をセビリアの序曲とした。ますます惨めなのは、このカロン・ボーマルシェの作った劇本はもはや数年前にもう一人の劇作家のジョヴァンニ・パイジエッロが同名のオペラに作られた。というわけで、あの劇作家のファンたちと当時のアルジェンティーナ劇場の相手であるヴァッレ劇場に雇われた「偽の観客」は公演する日に席で拍手したり、嘲笑ったりして、オペラを聴くために来た観客は歌声が第二幕からほとんど聞こえないから、劇場から離れた。初演日は大失敗となった。

「必ず気にしますよね、あの日のこと。」私は顔を上げて、ロッシーニの目の奥に見えるほどに。

「まぁ、昔のことじゃ。念頭に置かないよ。」彼は目をそらさないように視線を私のほうから離した。

「身から特別な影を見た。おぬしならできるはず、やってみよう。」

「...わかりました。では、試してみます。」

「楽しみにしてるよ、おぬしの『演奏パフォーマンス』...」

私は床から立って、テレーゼのそばに来た。ただ今、私は冷汗がまみれていたし、頭の中では楽曲のメロディーやテンポ、各楽器のシャープとプラットが飛び回っていて、みんなの顔にフィガロの顔に見間違ったし、次の瞬間にステージに失神して倒れるみたいに体がしゃちこばっている。

その時、テレーゼは指揮棒を私に渡せてくれた。

あれは、ヒノキから作って、手持つの部分はラベンダーヒスイで、オキザリスのつるし飾りが付ける、すごく美しい指揮棒だ。

「きっと、大丈夫。」

「え?」

テレーゼは今、私に慰めようとしているの?

「ふん。か、勘違いませんね。私は、緊張していませんよ。」

「人間、変な生物。」

「...まあ、一応、ありがとうね。」

テレーゼはそっと嗤った。「頑張って。」

「うん。」


私の指揮が始まった。

私は目を閉じて、以前母上が自分をコンサートに連れてきたとき各楽器の位置の印象で、この曲から感じた情熱、愉悦、軽やか、爽やかを、奏者たちに届けるくらい、直感的に両手を打ち振って、指揮棒から流れ出している。

指揮の始まりと演奏の始まりは、1拍子ぐらいの間隔がある。この間隔は初めて指揮する私にとって、長くて、とても怖い。けれどもすぐ、私は答えを聴こえた。まずは弦楽器と木管楽器のささやきから構成した冒頭がこっそりと現れた。そして、ヴァイオリンとヴィオラを主役として、活気を持っている第一主題が来た。とうに何百回聞いたメロディーが終わった後、木管楽器が「嵐の楽節」を連れてきた。ロッシーニはこのオペラの第二幕にも似る演奏法を使った。楽節を四回の反復進行したあと、オーボエとフレンチホルンが次々と軽くて明るい第二主題を解明した。最後、両翼配置したヴァイオリンを含んだ全部の楽器が「ロッシーニ・クレッシェンド」で壮大な最高潮に導いた。


私が手を下げた従って、楽音も盛り上がった終わりの中に止まった。緊張過ぎるかも、感情を込めすぎるかも、私はほとんどフェルマータが終了の瞬間に膝が笑って跪いた。

「お疲れ。」私に手を差し伸べてくれたのは、とうぜん彼女だ。

一人の観客が拍手していた。

「Bravo! ...て言いたくても、それでいいと思う。」こう言ってから、たくさんの光点がロッシーニさんを包んで、彼の体も透き通りになっている。

「もう満足だ!これでトリュフローストチキンが川に落ちた悲しみも癒やしたほどに満足だ!」彼はビール腹をポカポカにはたいた。

「え?待ってください、ロッシーニさん、どうして???」

私の話が終えなくて、彼は一筋の光になって徐々に散らしてしまった。


「あ、あれ、今どんな状況??私はまだロッシーニさんにサインを頼まないよ!」

「人間の話なら、除霊みたい。」テレーゼは魔法で彼女の造物を仕舞いながら話した。

「へ?除霊?でもどうして私が?」

「教えない。」テレーゼは自分勝手にここから歩き出した。

「なんでだよ~~~」私は急に彼女に追いかけた。

「急いで、次に。」

ま、まあ、どうせ暇だから構わない。

「それで、次は誰?」

「着けばわかる。」

「はぁ~」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る