Für Elise

三十九秒

音合わせ


目覚めたら、青くてつまらない空が見えた。背中の感触が土や石らしいのはなぜだろうか。意識を失う前はベッドでごろごろしていたのに。いや、ごろごろしていたというよりも私は本当に何もせずに、目を開けてぼんやりしていた。

私がお金持ちの娘だということは否めない。小さな頃から母上の意思によって異国の音楽学校でエリート教育を受け、二年まえにイタリアへ帰国して勉強を続けた。しかし私は本当に庶民と仲良くなるのは苦手だ。友達は一人もないし、両親も私の知らない理由でいつも家にいない。父上に会ったことがあるのかさえ疑わしい。そうして退屈な二年が過ぎた。

放課後、いつもとおり私はブルーノさんに車で家まで送ってもらった。家に着いた後、私はいつも通り、めちゃくちゃ多い階段を上がって二階目の自分の部屋にたどり着いた。

授業を受けてる間に、ちょっと熱出てる気がした。ベッドに横たわって、鏡台の上の、私が両親との写真を見ちゃった。私はほとんどこれで母上の様子だけ覚えられるのだ。

「はぁ...一体いつまで...」こう思って私は眠たくなった。次の瞬間、ベッドに横になっていた私の体は爆風のような力によって宙に舞い上がって失神した。

「その後一体どれぐらい過ぎたのだろうか。まさか寝坊したのだろうか」と思って、私は飛び起きた。そして私は心配しても無駄だと理解した。視線が届くところには廃墟しか残っていなかった。かろうじて近くにあるセメントで作った壁から、ここがかつての自分の家の近くと判断できる。

数歩歩いたら、私は邸宅のゲートがあるはずところに行った。真ん中の柱が壊した噴水を越えて、自分の家が私の前に現れた。建材が良いかも、本来の形はだいたい残された。

これは一体...これからどうしようか...いろんな考えが私の脳内飛び回っている。

「やばっ!生き残った人があるかも...!」私は正面玄関の向けに駆けた。

「ブルーノ!ジーナ!どこに行ったか!聞こえたら答えて!」私は廊下で走りながら大声で叫んでいる。でも、前に走れば走るほど、不自然な雰囲気を感じた。倒れた甲冑や落としたシャンデリアなどもあるけど、この屋敷はまるで今まで誰でも住んでいなかったかのようだ。うん、ここには、生き残った者が一人もない。

私は家を出かけて、あてもなくて歩いている。約半時間後(実際どれぐらいか分からない、時計もないから)、歩き続けているけど私は周りの非現実的な景色によってめまいで吐きたくなっている。しばらくしてから、自分が通っている学校、むしろもともと学校だった空き地に着いた。不快感を我慢して、私はある廃墟で止まった。目の前の光景がひどすぎて、私はまばたかずにはいられない。

「あの女、がれきの上にピアノを弾いている⁈」私は見開いている。

上半身はエンパイア・ドレス、腰以下はバッスル・スカートで包んで、白皙な太ももの肌がフリルと黒ストッキングからちらちら見えて、手袋に覆われている両手は鍵盤をゆっくり撫でて、ツインテールが風に吹かれている。近くないから顔があまりはっきり見えないけど、どこで見ることが...あのメロディーも..耳慣れてるのに...あ、「ピアノソナタ21番、ヴァルドシュタインの第三楽章!」

彼女は点頭した。

すごい、とてもすごい。三連符、トリル、オークタヴ、シンコペーション、すべてのノートが無傷にはっきり演奏されて、すべてのスキルが完璧に表現された。まるで、ベートーヴェン本人の意識が彼女の指を操ってるみたい。

美しい音色にうっとりしているとき、最後のノートは空気に消散した。そして、彼女はピアノ椅子から立ち上がってただの観客、言い換えれば私に敬礼した。私も拍手を報いたのに...

「じつに美しい演奏...」拍手はまだ終わらないにもかかわらずに、彼女は私の前に疾走してくれた。

「名前。」彼女は私のそばに寄り付いた。

「は、はい?」彼女のいきなり出した反応に私はドキッとした。

「名前。」

「...私の?」彼女はうなずいた。

「まあ、いいか。私はエリーゼ、エリーゼ・マルファッティと申します。あんたは?」彼女は一言も言わなくて、ずっと私にガン見ている。

「ついてきて。」しばらく、彼女はこう言って背を向けて前に飛んだり跳ねたりした。

「え?」たとえ私は一瞬ためらっても、彼女が目覚めてから唯一の生き物と思った後、私は彼女の後ろに従うのを決めた。

「テレーゼ。」遠くない距離を歩いた後、彼女はそう言った。

「え?あっ、テレーゼ、そうか、あんたの名前、ですか。」

「うん。」彼女はまだ歩いている、私のほうにちらっとさえも見ない。

「ではテレーゼさん、私たちは今どこへ行きますの?ねぇ、何か言ってよ。」

そういうわけで、テレーゼと私、エリーゼ・マルファッティの何となく始まった旅が、歩み出した。

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