役立たずだと思っていたスキル”教祖”が実は最強だったんだが? #信者の数だけ強くなれるのでインターネット配信しながらダンジョンに潜ろうと思います
メッシュペーパー
プロローグ
「ぬわははは!!! オマエの攻撃など効かん、効かん!」
「ぐっ……」
城と形容するには些かボロい上に豆腐建築過ぎるそこは、魔王の寝ぐら、すなわち魔王城と呼ばれるところで勇者パーティと魔王は死闘を繰り広げていた。
勇者、戦士、魔法使い、聖女で構成された勇者パーティ。
その全員が満身創痍で、特に勇者がボロボロだった。
だが、反対に魔王はその身にキズ一つなく元気なままだった。
勇者が叫ぶ。
「聖女! 回復を頼む!」
「もう打てません! つい先程の治癒で魔力が尽きてしまいました!」
「回復薬は!?」
「さっき転けた時落として全部割っちゃいました!」
「何してんだバカ野郎!!!」
聖女はドジだった。
こいつはいつも大切な時に限って……と悪態を吐きたい勇者だったが、バカとじゃれあっている暇などない。
相手はあの魔王なんだ。
魔物たちの頂点に君臨している魔物の王なのだ。
隙を見せたらたちまちパーティは崩壊してしまう。
一筋縄では行くはずが無いと分かっていただろう。
ここは一つ作戦を変えて、攻め方を変えよう。
そう勇者は考えた。
「くそ……仕方ない、みんなプランBだ!」
「「「プランBってなんだ?」」」
「さっき戦う前に説明しただろうが!」
勇者は狼狽えた。
まさかここまでコイツ等がアホだとは。
いくら即席で作った対魔王パーティだからといってここまで連携が取れないことはないだろう。
長い付き合いである聖女はまだ許容できるからいいとして、残りの戦士と魔法使いはなんなんだろうか。
世界ダンジョン協会において最高峰の戦士と魔法使いを要求したはずだ。
だというのにこの有り様はなんだ。
「お腹すいた〜……あ、誰かガム食う?」
「いらないよ!」
「魔法使い、俺にガムを一つくれないか?」
「ほいよ」
「ありがとう」
「食ってる場合か!」
勇者は激怒した。
バカタレが。
何がガム食ってんだ貴様等。
今世界の命運を分ける戦いをしているんだぞ。
魔王退治に遠足気分できやがって、ボケナス共が。
一体何しにここに来たんだ。
遊びに来たんじゃ無いんだぞ。
クチャクチャクチャクチャうるせえよ。
おい、お前まで受け取るんじゃない聖女。
お前だけは絶対に許さん。
勇者がガムを押し付けてきた魔法使いの手を振り払っていたその瞬間———
「茶番してる暇なんかあんのか?」
「……ッ!?」
魔王は一瞬のうちに勇者に肉薄し、かつて無い程の強烈なパンチを鳩尾へ決める。
そのままパンチのエネルギーによって壁際までぶっ飛んだ勇者は力なく倒れ込んだ。
「ガバッ……」
一瞬何が起こったのが殴られた勇者本人にも分からなかった。
魔王がスキルなどを使った形跡はなし。
つまり、認識できないほどのスピードでぶっ飛ばされたとそう本能で理解した。
それは分かっていた上での四対一だったが、呆気なく終わってしまいそうだ。
数ではこちらが有利なのに。
数のハンデをも凌駕する身体能力によって、これから勇者パーティは全滅してしまうのだろう。
俺に魔王討伐など夢のまた夢だったのだ。
あのパンチだけでそれを思い知らされた。
勇者の身体にはもう力が入らなかった。
「勇者様ー!」
聖女が叫んだ。
そうだ、聖女。
俺には護らなければならない物があるんだ。
何があっても聖女、お前だけは護ると誓ったじゃないか。
俺はここで終わるのか?
いいや終わらない。
切り札だって、条件付きだがある。
そしてその条件が満たされた今。
するべきことは床と仲良くすることではない。
たかがパンチくらいでなにビビっているんだ。
切り札の一つ———
さあ覚悟を決めろ。
立ち上がれ。
俺はお前を倒す。
そう勇者が覚悟を決めた———その瞬間。
「あ! もうおっ始めてるじゃねえか!」
一人の青年が入ってきた。
モンスター危険区域エリアに指定されている魔王城に居るにも関わらず、青年はパーカーにジーンズというラフな格好をしていた。
青年は背後にたくさんのドローンを引き連れていた。
「な、お前は」
「あれー、勇者御一行様、みんな仲良く怪我しちゃってさあ。配信の邪魔だから帰ってな」
「おい待」
そう青年が言うと指をパチンと鳴らした。
鳴らした瞬間勇者パーティが消えた。
青年が勇者パーティを別の場所へ転送させたのだろう。
「まだ仲間がいたとはな!!!」
「俺は別に勇者の仲間じゃねえよ」
「そうか! なあお前は強いか? あいつ等弱すぎて退屈してたんだ!」
「魔王さんのお眼鏡に敵うかどうかわからんが勇者よりは強いと思うぜ?」
青年は指先からキューブを取り出し、そのカタチを剣に変形させ、魔王へ構える。
「ぬわははは!!! 口だけじゃ無いないことを願うぞ! お前名乗れ!」
さらに青年に対し魔王はとある流派の構えなのだろう、左手を前に突き出し右手を握り腰あたりで構える。
「俺は
「そうか!!! オレはリアム!!! 魔王だ!」
「さあ、今回の配信内容は魔王狩りだ! いくぜ!」
青年の言葉を合図に、戦いの火蓋は切られた。
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